実務で即生きてくる学び、
実務家教員との距離感も魅力

河尻 カリキュラムの科目を見ると、専門的な言葉が並んでおり、アカデミックな印象も受けるのですが、K.I.T.で学んだことで、現在の仕事に役立っていることは何ですか?

青山 まず、経営に関することを体系的に学べたことが大きいです。事業計画を作るとき、以前はアイディアを我流で紙にまとめて提案していましたが、こちらで学んだことできちんとしたフレームワークに基づいて、皆の腑に落ちるようなメソッドで提案ができるようになりました。そうなると周囲の見る目も違ってきます(笑)。おかげで、映画業界を横断的に束ねる「映画館に行こう!」実行委員会の取りまとめ役を務めることができました。本業のほうでも映画業界だけではなく、他の業界の視点や知恵を入れてもっと活性化していきたい。その目的を達成する手段としてK.I.T.での学びは非常に役立っています。

河尻 事業計画は、勘と経験でやってしまいがちですよね。そうなるとどうしても視野が狭くなってしまう。理論的に裏付けのあるフレームワークを使う技術があれば、もっと簡単に物事が進むケースはたくさんありそうです。松井さんはどうでしょうか?

松井 K.I.T.には第一線で活躍する実務家の教員方が多いです。実際に仕事で困っている問題について「先生だったらどうしますか?」と率直に聞けたのがよかったですね。常にイノベーションが求められる中で、新しい技術やシステムによるコンテンツを、海外でどのようなプラットフォームで売っていけばいいのか。そして、どのような権利処理が必要なのか、これまでは曖昧だった権利がクリアになることで、営業として提案の幅が広がりました。

河尻 なるほど“常にイノベーション”という意識はとても大切ですね。確かに“学校”であれば、先生も学生もフラットな関係なので、利害を超えた意見交換ができる。コンサルタントに頼むと高額な報酬がいる案件でも、大学院ならば気軽に相談できるということもあるのですね。

講義やゼミでは常に意見を求められ、全員参加のディスカッションが繰り広げられる

 K.I.T.の特徴の一つは、実務家教員との「距離感」。著名な経営者や実務家を招いての講義も頻繁に開催され、ビジネス・知的財産のプロと意見をぶつけ合う貴重な経験が得られる。講義を受け持つK.I.T.の教員陣は、いずれも第一線で活躍する現役や、長年現場にたずさわってきたエキスパート。国内のみならず、海外からも著名なゲスト講師を招聘している。

学内でネットワークを構築し、
プロジェクトを立ち上げる

河尻 実際に役立った、お勧めの講義といえば何ですか?

青山 三谷宏治先生の「戦略思考要論」が一番でした。これまでも自分なりに考えて仕事をしてきたはずなのに、三谷先生の講義を受けて、いかに自分の考えが凝り固まったものであるかに気づきました。視点の多さや、多層に考える深さが、まったく欠けていた。また野村恭彦先生の「ナレッジコラボレーション特論」も役立ちました。フューチャーセンタ―の概念を学んだことで、新しいプロジェクトを立ち上げることができたのです。

河尻 フューチャーセンタ―というのは、所属組織や立場の異なる多様な人たちが、横断的な対話を行う場のことですね。ワークショップを積み重ねて、新しいビジョンを描いたり、新たな視野を得たりすることによって、複雑な問題を解決する。青山さんは今年、コミュニティ作りの試みとして、「渋谷真夜中の映画祭」を企画して実行したということですが。