ストレスや睡眠不足、偏りがちな食事が免疫機能を低下させる

 清水氏は免疫低下の原因として、精神的なストレスや睡眠時間の短縮、食事の偏りなどを挙げる。
「ストレスを受け続けると免疫機能が低下することが研究で分かっています。例えば試験期間中の学生の免疫機能は、通常時に比べて低下しています。実習期間中の看護学生もそうですね」

 ビジネスパーソンは、ストレスがたまるさまざまな要因に囲まれて働いており、それらから完全に逃れることは難しい。しかし、「リラックスする時間をつくるなど、できる限りストレスをためない生活を心がけてください」。

 十分な睡眠時間の確保も難しい。残業ができないために仕事を持ち帰ったり、テレワーク中はオンビジネスとオフビジネスの区別が付きにくく夜遅くまで働いてしまったり……。また、シフト制で働いている人は起床就寝時間が不規則になりがちだ。

「睡眠不足は免疫機能の低下をもたらすので7時間は眠りたい。7時間未満になると風邪の罹患リスクが高まることが分かっているからです。ただ、寝床に就いていればいいというわけではなくて、ぐっすり眠れる質の高い睡眠を取ることが大切です。寝つきや寝起きが悪いと感じた時は睡眠の質も低く、免疫機能の低下につながります」

 就寝前にスマートフォンでニュースやメールをチェックする習慣のある人も要注意。画面から発するブルーライトの刺激が睡眠の質を低下させるからだ。

 そして食事の偏り。規則正しい時間にはバランスの良い食事を摂ることが理想だが、わかっていても現実には難しい。それでも、「ビタミンAとビタミンDの不足は免疫機能を低下させる」ことは覚えておくべき。ビタミンAはレバーや鶏卵、バターのような動物性食品に、ビタミンDはイワシ、カツオ、サケのような魚に多く含まれる。

 これらの食品をバランス良く毎日食べることは難しいかもしれない。そこで清水研究員が注目しているのは、ビタミン類の摂取に加えて「乳酸菌を継続的に摂ること」だ。

「乳酸菌の種類はたくさんあり菌株によって働きが異なります。私が研究している粘膜免疫機能は、『分泌型IgA(分泌型免疫グロブリンA)』と呼ばれる抗体の活躍によるものです」

「抗体の1つである分泌型IgAとは、病原体にくっついて粘膜下への侵入を防いだり、毒素を中和するように働く免疫物質のこと。分泌型IgAは、鼻汁、唾液、消化管などの表面の粘膜中に分泌されます。母乳にも含まれていて赤ちゃんを守っています。この分泌型IgAが増えれば、風邪やインフルエンザなどにかかりにくくなる効果が期待できます」