いち早く「耐震」「免震」「制震」技術を開発

 同社の軽量鉄骨造の建物については、1981年に開発した独自の耐震技術「トリプルコンバインドシステム」を採用している。建物の軸組(柱)を2つのパネルフレームで両側から挟み込んで一体化した構造でタテ揺れの力を支え、パネルフレームのブレース(筋交い)によってヨコ揺れへの水平力を受け止める。この耐震構造の強さは、阪神・淡路大震災時に実証されている。又、現在では、これらの技術を戸建住宅ブランド「xevo(ジーヴォ)」の全商品に標準採用している。

耐震技術柱とパネルを一体化した耐震技術「トリプルコンバインドシステム」。タテ揺れに耐力を発揮する

 しかし、震災以降は頑強さだけではない地震対策技術の研究開発が加速した。2001年には独自技術による免震装置を搭載した「ステイトメント ウイズC 免震タイプ」を発売。さらに2003年には、機能向上とコストダウンを実現した「新免震住宅」を発売した。その後も免震住宅の改良を続けている。

 同社独自の免震システムは、基礎と土台の間に特殊な装置を配置することで、地震の揺れを建物に伝わりにくくするのが特長だ。家財道具の損傷などの被害を最小限に防ぐことができる。ただし免震住宅はコストが高くなるのがネックだ。そこで、より手軽な価格で地震の揺れを吸収する「制震」装置も開発された。

 同社の制震装置は、柔軟に変形するゴムのような素材を組み込んだ制震パネルを間仕切り耐力壁に用い、地震エネルギーを吸収するのが特長だ。後述する実験結果から、阪神・淡路大震災クラスの地震でも建物の変形を20%~50%低減し、ボードやクロスの亀裂など内装への被害も少なくすることができることが立証されている。

 耐震、免震、制震の他にも、地盤の性質を正確に診断する解析プログラム、軟弱地盤に対応する基礎補強工法など、多様な角度から安全性向上のための技術開発を行っている。

 2006年6月22~29日の期間、独立行政法人防災科学技術研究所が建設した世界最大の実大三次元震動破壊実験施設、通称「E-ディフェンス」において、民間企業では初となる大規模な加震実験を実施。巨大地震(震度6強~7、阪神淡路大震災時の記録波およびその加速度の2倍レベルも含む)18回、大地震33回、中地震34回、計85回の加震実験を行ったが、大和ハウス工業の建物に大きな損傷は発生しないという結果が得られた。

2020年、「エネルギー自給住宅」発売にむけて

 東日本大震災以降は、「制震」オプションの販売が伸びるなど地震対策が改めて注目されると同時に、「エネルギー」に関するニーズも高まっている。

外張り断熱通気外壁独自の外壁システム「外張り断熱通気外壁」
断面図

 大和ハウス工業では2006年より、戸建住宅に耐久性と省エネルギー性に優れた独自の外壁システム「外張り断熱通気外壁」を標準採用したのをはじめ、環境配慮型住宅の商品化に積極的に取り組んできた。

 2010年には、家庭用リチウムイオン蓄電池、HEMS(ホーム・エネルギー・マネジメント・システム)、太陽光発電システムを搭載した住宅「スマ・エコハウス」の実証実験を開始。得られたノウハウを生かし、2011年10月に「スマ・エコ オリジナル」を発売した。これらの取り組みは、消費するエネルギーを100%その家で創り出す「エネルギー自給住宅」を2020年までに発売するプロジェクトのステップと位置づけている。

 同社の取り組みは住宅だけではない。少子高齢化や食糧問題など、さまざまな社会的課題に向き合い、それを解決する商品やサービスを提供しようと努めている。

「総合技術研究所では、安全・安心、スピード・ストック、福祉、環境、健康、通信、農業の頭文字を取った“ア・ス・フ・カ・ケ・ツ・ノ”をキーワードに、さまざまなテーマの研究開発に取り組んでいます。新しい技術は商品として販売されて進化する。それがまた新しい技術のヒントにつながると考えています」(小林副所長)

 同社の創業者は、新商品で新しいマーケットを開拓するという経営哲学を貫いてきた。その哲学は現在の大和ハウス工業にも脈々と受け継がれている。