キリスト教精神に基づく人間教育で知られる聖学院。勝負どころに立ったとき、自分で道を選び、切り開くことができる人間の育成を目指す。注目を集めたLEGO(R)による「思考力入試」が定着し、授業もプログラミングや科学実験など探究心を伸ばす内容の連続だ。
伊藤大輔校長
聖学院は、主体的で「深い学び」を実践する学習法「ICE(アイス)モデル」を全ての授業に導入している。ICEとは、Ideas(知識)、Connections(知識の活用)、Extensions(課題解決)の頭文字で、カナダで開発された学習・評価のモデルだ。これにより、生徒は主体的に学ぶ意欲を持ち、アイデンティティーの成長が促される。
2021年度から校長に就任し、自身も卒業生の伊藤大輔校長も「大人が口を出せば、生徒の思考力が止まってしまう。私たちにできるのは我慢すること」と説き、生徒の自主性を重んじる。同校ではICEモデルを通じて「Only One」の心を育てたいという。
「Number Oneは他者と比べる評価ですが、Only Oneは、他の者に依存しない、支配されない『私』です。自分だと思い込んでいるものから、家族の影響や流行、地位などを剥がしたら、何が浮かび上がるのか。自分を見つめ続ける知力、体力のある人間になってほしい。ただ、必ずしも18歳で個性的である必要はありません。将来、正念場を迎えたとき、自分のやりたいことを選ぶ力を本校で学んでくれたらいい。自分で納得する結論が出せる人間になれば、それが個性ですから」と伊藤校長。
同校はLEGOを使った思考力入試も有名で、オリエンテーションや授業でも活用している。「手は第二の脳」ともいわれ、頭の中で言語化しにくいものを、手を動かして表現することで、新しい気付きや論理的思考が生まれやすくなるという。
「グローバルイノベーション
クラス」は2年目に突入
科学、技術、工学、芸術、数学を統合的に学ぶ「STEAM教育」にも力を入れている。中学では「情報・プログラミング」というSTEAM教育の中心となる学校独自科目を設定。動画編集をして自分CMを作ったり、プログラミングでドローンを飛ばしたり、学校ピクトグラムを立体的に設計し3Dプリンターで出力したりしている。これらの学びで得た「表現方法」を他教科でも発展的に活用できるようにし、例えば、理科の授業では360度カメラで「校内の落ち着く場所」を撮影して、動画編集の技術を生かして発表などを行った。こうした学びは日々、生徒の意欲と想像力を刺激している。
21年度から、このラボを発展させた「グローバルイノベーションクラス」を高校に新設し、約35人が切磋琢磨している。授業では、STEAM教育の他に、SDGsを英語で学び、ディスカッションを重ねて、生きた英語力を身に付ける「Immersion」や国際・社会・環境系などからテーマを選び、ゼミ形式で学ぶ「PROJECT」などを実施している。
時として、 Number One以上に厳しく困難なOnly Oneへの道。生徒自身が持つ能力や、やる気を引き出しながら、その心を育てる教育を実践していく。