130余年前に女子教育の礎として誕生した東京女学館。誠実さや品性を重んじながら、人と社会に貢献する女性の育成に力を注いできた。今はインクルーシブ・リーダーシップの獲得や、先駆的な英語教育を通して、生徒一人一人の人生を支え拓く「生きる力」を育てている。
渡部さなえ校長
東京女学館は「品性」を大切に育み、教養豊かな女子の育成に取り組んできた。創立110周年を機に、教育目標を「高い品性を備え、人と社会に貢献する女性の育成」と定め、「基礎・基本に根ざした個性の伸長」「自ら問題を発見し、解決する力の育成」「他者を思いやる心の育成」を、人格形成の三つの柱に掲げている。
「具体的には、中高6年間で『インクルーシブ・リーダーシップ』を身に付けることを目標としています。インクルーシブ・リーダーシップとは、1人のリーダーがけん引するのではなく、一つの課題を皆で共有し、それぞれが主体的な視点を持って解決する、包括的な力のことをいいます」と渡部さなえ校長。
インクルーシブ・リーダーシップを推進するため、体育大会や記念祭、修学旅行などの学校行事は、実行委員会方式(スタディ・アジェンダ)で企画運営される。生徒目線で目標を設定し、スケジュールを立案することで、主体性と自主性が育まれるのだ。一人一人が責任を持って潔く最後までやり切ることで、生徒たちは自信を持ち、短い期間で大きく成長するという。
道徳を英語で学ぶ
プログラムを導入
東京女学館の特色は、独自の英語教育にもある。同校では2021年から、中学2年の道徳と理科(環境問題)の授業に、「グローバルコンピテンスプログラム」を導入した。教科横断型の授業を、ネイティブ教員からオールイングリッシュで学ぶことで、グローバル社会で生きていく上で必要となる、知識やスキル、マインドセットを養うことが狙いだ。授業は「自分を知ろう」というアイデンティティーの確認から始まり、家や社会、世界へと興味を広げ、最後はSDGsにつなげていく。
「生徒アンケートでは95%が満足しているという回答で、GTECのテストでも好結果が出ました。使える英語を楽しみながら強化できることが大きなメリット。英語を学ぶモチベーションも向上します」(渡部校長)
同校では1学年に1クラス、英語教育と異文化教育に特化した「国際学級」がある。帰国生と一般生が在籍し、日常的に異文化交流を行いながら生活する。ディスカッションやプレゼンの機会も多く、実践的な英語運用能力が養われる。国際学級で育った生徒たちの多くは、物おじせず一歩を踏み出す勇気と行動力を持つようになり、卒業後は海外大学をはじめ私大上位校に進学している。
「本校の生徒の進路先は多彩で、毎年、音楽や美術などの芸術系、また医歯薬看護系に進む生徒も多くいます。本人の才能や努力を認めて応援する保護者の方々が多く、生徒たちはクラブと勉強をバランスよく両立させながら、それぞれの道に進んでいます」と話す渡部校長。さまざまな個性を持つ生徒たちが、6年間の教育で「生きる力」を身に付けて巣立っている。