2023年4月から、共学の「サレジアン国際学園世田谷中学高等学校」へと一歩を踏み出す。探究的な学びを重視する本科、英語力を強化するインターナショナルの2クラスを設置。課題解決力を養うPBL型授業を全教科に取り入れ、「世界市民力」の育成を目指す。
小西 恒 教頭
カトリック女子修道会「サレジアン・シスターズ」を母体に、1960年に開校した女子校・目黒星美学園が、来年から共学となり、校名も変わる。従来掲げてきた「良き市民」の精神に、グローバル視点を加えた「世界市民力」の育成をうたう。
この言葉に込めた意味を、小西恒教頭は「気候変動や海洋汚染など、今まで経験したことのないような変化や問題が世界規模で起きるようになりました。地球レベルの視野と当事者意識を持って実践するためのスキルや発想を育んでほしいと思っています」と語る。
「世界市民力」を育むに当たり、五つの柱を新たに据えた。ミッションスクールとして従来から取り組んできた「心の教育」を土台に、「考え続ける力」「言語活用力」「コミュニケーション力」「数学・科学リテラシー」を伸ばしていく。
昨年度から全教科の授業で、問題解決型のPBL型授業を取り入れてきた。教員が投げ掛ける「トリガークエスチョン」に取り組みながら、主体的な学習と考える力を養っていくためだ。「大人でも簡単に答えが見つからないような社会課題に向き合った生徒から、なるほどと思わされるような提案が出てきます」と、小西教頭。中高6年間の実践で、相当の成長につながるだろうと期待を寄せる。
新設の2クラスで
探究心と国際感覚を育む
新たなカリキュラムの導入に伴い、「本科」と「インターナショナル」の2クラスを設ける。探究学習に重点を置く「本科」の目玉の一つが「ゼミ授業」だ。生徒は自ら設定した研究課題に、中2から4年間かけて取り組む。また、「自然科学」「人文社会科学」「数理情報プログラミング」の三つの領域から所属ゼミを選び、そこで討論や協働、発表などを重ねていく。「失敗を繰り返しながら一つのテーマに打ち込む中で、五つの柱で掲げた力が確実に身に付いていくと思います」(小西教頭)。
「インターナショナル」では、英語の習熟度に応じたグループ授業を行う。帰国生などを想定した「アドバンスト」では、英数理社の授業は全て英語。英語の学習歴を問わない「スタンダード」では、ホームルームや英語授業を外国人教員が主導。両グループの生徒が混合で学ぶ実践型の英語授業「サレジアン・アカデミック・プログラム」(SAP)もあり、多様な価値観などを学びながら国際感覚が培われていく。
「カトリック・ミッションスクールとして実践してきた心の教育はそのままに、21世紀型教育に取り組むという意味では、パイオニアだと自負しています」と小西教頭。修道会創設者のドン・ボスコの教え「アシステンツァ(青少年といつも共にいる)」に基づく教育を実践してきた同校だが、時代の変化に応じた新しい学びにも、その教えは確実に息づいている。