1926(大正15)年に「真に社会に貢献出来る有為な近代女性の育成」を掲げて創立。2010年から学校改革に取り組み、教育のICT化を推進。16年からは最先端のデザイン思考を取り入れた必修科目「創造性教育」を導入し、大学や社会が求める創造性と起業家精神を育んでいる。
山口龍介副校長
「世界を相手に活躍できる若者を育ててほしい、という企業からの切実な要望を受けて、今、大学入試は、大きく変わり始めています。世の中の新しい状況を認知して、新しい価値を生み出していける人材が求められている。ならば、その手前の中学・高校を変えることができれば、若者の力をもっと引き出せるはずだと考えたのです」。山口龍介副校長は、そのような考えの下、2010年から学校改革を進めてきた。その中心にあるのが、「創造性教育」である。実践や体験を通して自分の思いを形にして、それを仕事に結び付ける力を養成すれば、社会で通用する実力を問う大学入試への対策にもつながる。そのため中学では、この世にないものを創り出す“デザイン思考”を学び、さまざまなプロジェクト型学習を展開している。
その集大成となるのが、高校2年の「事業化実習」。生徒が仲間を募って出資し、模擬会社を立ち上げる。デザイン思考を駆使して制作したオリジナル商品を、学園祭や修学旅行先のハワイ大学でチャリティーバザーを主催し販売。売上金は教育基金に寄付して地域社会に貢献する。「事業化実習では、試行錯誤しながら、アイデアを実際に形にしていきます。生徒たちはそこでものづくりの大変さや働くことの面白さ、コミュニケーションの大切さなどを学んでいきます。この体験は、将来の仕事を考える上でも大きな力になっていきます」(山口副校長)。
大学入試の
総合型選抜で力を発揮
もう一つの学校改革の目玉は、教育のICT化だ。16年から全授業がクラウドベースでICT化され、19年には全普通教室が「黒板の無い教室」となった。さらに1人1台のiPad ProとApple Pencilが導入されたことで、授業の効率は格段に良くなった。生徒たちは事前に配信されたファイルに直接書き込み、教員は手元のiPadで生徒たちがどのくらい理解しているかをリアルタイムに把握する。こうしたICTの導入で授業のスピードが2倍にも3倍にもなり、時間に余裕ができた分、授業内容にも質的な変化が起きた。仲間と取り組む実践的な演習が活発になり、「知識や情報から意見を組み立てる」「自分独自の意見をつくり上げる」「表現する・議論する」というステップにまで到達できるようになったのだ。
また英語教育でも、ネイティブ教員がオールイングリッシュを前提とした授業を展開、生きた英語力の育成に取り組む。
こうした学校改革が実を結び始め、21年度の大学入試では総合型選抜で前年比4倍という合格実績を出した。「大学入試が実社会で通用する実力を問う面接中心の試験へ移行する中で、本校の教育が力を発揮し始めた証しだと思います」と山口副校長。実学教育の伝統を持つ瀧野川女子の学びが、新たな力を得て次のステージに向かいつつある。