2020年4月、男女共学校として未来を見据えた学校づくりに踏み出した品川翔英中学校・高等学校。「学び続けるLEARNER(ラーナー)」の育成を目標に掲げた革新的な教育は大きな反響を呼び、中学・高校共に入学応募者が急増している。
品川区大井地区に、従来の学校の“当たり前”を疑い、生徒主体の型破りな教育を実践している学校がある。2020年に共学校としてスタートを切った品川翔英だ。
同校はクラス担任制を廃止し、「学年担任制」を導入している。朝礼やホームルーム、清掃など、学年教員団がチームとなって担当している。1人の担任がクラスの生徒を囲い込むより、得意分野を持った教員がチームで当たった方が最適な対応ができるとの考えからだ。
村上亜矢子教頭
21年からは「メンター制」も導入した。教員がメンターとなり、学習や生活面の相談に乗るだけではなく、学校生活や進路などの相談にも応じる。しかもメンターになる教員は、生徒自らが選ぶのだという。「メンター制は半期に1度、生徒が教員を選ぶという画期的な制度です。メンターの支援を受けることで生徒は自信を持ち、思い切ったチャレンジができるようになります。教員側も生徒から選んでもらえるように、LEARNERであり続けなければなりません」。そう語るのは村上亜矢子教頭。
これらの施策は頭では描けるものの実際に行うのは難しい取り組みに違いない。それをためらわずに導入し、本気で取り組んでいるのが品川翔英という学校であり、教員たちなのだ。
「自己調整学習」の推進
のため、定期テストを廃止
学習面では定期テストを廃止した。その代わりに、教科ごとに確認テストを実施。同校が唱える「自己調整学習」に見合う方法を模索した結果である。「自己調整学習」とは生徒自らが目標を定め、計画を立てて予見(P)、遂行し(D)、振り返って改善する省察(S)というサイクルを回す中で、常に自分をモニタリングしながらコントロールする学習法。具体的には教員が1年間の学びの全体像が分かる「Bigシラバス」を提示する。次に生徒が単元ごとにそこで自分は何を学びたいのか考え、「Smallシラバス」を書いて提出。生徒が自分の立てた目標をどれくらい達成したかを確認するために小さなテストを行い、「何を学びたいのか」を振り返ることで、「何ができるようになったのか」を改めて意識させるのである。
「例えば今回のテストで点数がよくなかったのは、部活動の試合があって勉強の時間が取れなかったからだとしたら、次は部活と勉強のバランスを取ろうといった自己調整できる力を身に付けるのが自己調整学習の狙いなのです」と村上教頭は語る。
自ら考え行動し、成長していく「自己調整」の力を蓄えた「学び続けるLEARNER」を育成する品川翔英。保護者たちの大きな共感を呼び、生徒数は女子校時代の5倍に当たる1500人となった。現在、新中央校舎の建設が急ピッチで進んでおり、23年3月に完成予定だ。最新設備を備えた新校舎で、LEARNERたちの学びも加速するに違いない。