渋谷から徒歩8分という立地にもかかわらず、喧噪(けんそう)とは無縁の緑豊かな広々とした学びの環境が整う実践女子学園中学校高等学校。「感性表現教育」「探究教育」「グローバル教育」を三つの柱とし、混迷する次代に生かせる実践力を持った女性の育成を続けている。
湯浅茂雄校長
実践女子学園中学校高等学校は創設以来、「堅実にして質素、しかも品格ある女性の育成」を教育方針に掲げる。これは世の風潮や他者に左右されず、自分が信じ、できることを着実に積み重ね、そこから自然ににじみ出る品格を育成することを意味する。校祖・下田歌子について長らく研究を重ねた湯浅茂雄校長は、「この思いが伝統として受け継がれているのは、生徒を見ていただければ分かります」と胸を張る。
同校には、コツコツと物事に取り組み、周囲を気遣い、挨拶や感謝の言葉を素直に表現するすがすがしい生徒が多い。これは同校教育の三つの柱の一つ「感性表現教育」のたまものだ。中1、高3の必修授業の「礼法」では挨拶の意味や型、和室での立ち居振る舞いを学び、相手を思いやる心を育み、それを日々実践することを目的とする。「品格はすぐに身に付くものではなく、日々の積み重ねから生まれるもので、生徒にとって生涯の財産となるものです」と湯浅校長。この感性表現教育に共感し、入学を決めたという保護者もいるほど同校〝伝統〟の骨格を成す教育となっている。
二つ目の柱は総合的な学習を中心にESD※を展開する「探究教育」だ。中1から高1の「未来デザイン」では「社会」「環境」「国際・異文化理解」の三つの視点からSDGsを捉えて取り組む。集大成となる高1の修学旅行では、ニュージーランド、シンガポール、沖縄から自由に選択し、地域ごとの多様な価値観を理解し、共感する心と挑戦する力を育んでいく。
大学の学びの体験が
より良い進路選択を導く
三つ目の柱である「グローバル教育」もESDを軸にする。英語教育では、中1から中3まで、10人のネイティブ教員の下、少人数・レベル別の授業を展開。国内のみならずオーストラリア、ニュージーランドでの海外研修も実施する。模擬国連の常連校でもある同校は、2021年には日本参加校から唯一の受賞である奨励賞を受けたほか、グローバル教育で長年取り組んできたESDの実績が認められ、ユネスコスクールの認定も間近となっている。
付属校ならではの取り組みとして大学・短大と連携した「10年教育」もある。高校生が大学の図書館の利用や大学の授業を受講できたり、実践女子大では単位認定制度も導入している。「他大学への進学希望者でも高校時代に大学の学びを体験し、より良い進路選択に活用してほしい」とキャリア教育としての意義も語る湯浅校長。その他、内部推薦制度では実践女子大への入学権利を得たまま他大学受験も可能となっている。
120年以上前、校祖・下田歌子が残した『女性が社会を変える、世界を変える』。この言葉は、現代も色あせず、ますます輝きを増しながら、次代を生き抜く新しい女性を育成し続けている。
※ESD:持続可能な開発のための教育