正解のない現代社会の課題に切り込む国内外のフィールドワークを実施。視野を広げ、バランス感覚のある柔軟な心を伸ばし、未来を切りひらく自立した女性の育成を目指している。2021年度は卒業生の約4割が理系に進学、「理系に強い女子校」としても実績がある。
及川正俊 校長
1914年創立の神奈川学園は、100年以上も前から「生きる力」と「判断力」を備えた女性の育成を目指してきた。コロナ禍や紛争など、今までの常識が大きく変わる時代になっても、目指すものは揺るぎない。学力を伸ばすことに並行して「国際・総合・ICT」の三つを教育の柱に据え、講演会やフィールドワーク、探究などの総合学習を通じて、「考える力」を育む。
中学1年生の総合の授業では、自分でテーマを選び、発表する「おひとり様文化祭」を実施。「LGBTQ」「生理の貧困」「高齢者の免許」など、ホットで多様な課題が並んだ。
高校1年生は、四万十川、水俣、岩手・宮城、沖縄、京都・奈良の5方面から、自分で行き先を選ぶフィールドワークを実施。水俣では、水俣病の患者だけでなく、医師、水俣病の責任を問われたチッソ側の社員にも話を聞いた。
「現代社会は物事を、0か100、単純な見方をしたがる傾向がありますが、単純な思考は簡単に情報操作に乗せられる危険があります。それぞれの言い分を聞き、多面的に物事を捉え、情報を整理して考える力を付けてほしいと思うのです」と話すのは、及川正俊校長だ。
今年度は、待ちに待った中3のオーストラリア研修も3年ぶりに再開予定。英語力と多文化共生への理解を育む中学の集大成となるプログラム。コロナ禍で研修に行けなかった学年にも参加を呼び掛けたところ、「高1で9割、高2で4割が希望しています」と及川校長はほほ笑む。
中学3年間で100種類以上の実験・観察に挑む
同校は理数教育にも熱心だ。中学の3年間で100種類以上の実験や観察をする。中学1年生は「ブタの眼球の解剖」や「ニワトリの筋肉の観察」などのプログラムを組んでいる。「眼球の構造一つを取っても、図を見て、役割や機能を理解するだけでは、そこで思考が止まってしまいます。しかし解剖をすると、『こんなきれいなレンズが生物の身体の中にあるんだ』などの、新鮮な発見が生まれます。抽象的な理論だけでなく、実験や観察とセットで学ぶことに意味があると思います」と及川校長。
数学では、思考力重視型の大学入試が増えていることに対応して、中学生から論理的思考力を鍛える。複数の解き方がある問題や、驚きを伴う問題を設定し、他者に解き方を説明することで、数学の応用力を付けていく。
充実した理数教育は、進学実績にも結び付いた。今春の卒業生の9割超が4年制大学に進学。そのうち4割が医学部や薬学部、看護などの理系に進んだ。
「生徒たちの着眼点は鋭く、興味・関心はとても幅広い。日々私たち教員も生徒たちから学んでいます」と明かす及川校長。一人一人の生徒に丁寧に寄り添いながら、自主性を尊び、周りの環境に流されずに自分で判断する女子の成長を促している。