この春、共学校に生まれ変わったサレジアン国際学園中学校高等学校。探究的な学びを重視する本科と、英語で学ぶインターナショナルの2コース制で、PBLを全教科に取り入れた。改革初年度の入学者は前年比3倍増、「世界市民」の理念への共感が広がっている。
川上武彦 統括募集広報部長
この春入学した中1の生徒たちが同校にもたらした変化について、募集広報部長である川上武彦教諭はこう語る。「多様なルーツを持つ生徒が集まってくれました。予想以上に学校の雰囲気が変わってきたと感じています。通学エリアも湘南や多摩、湾岸部にも広がりました。小学校から内部進学してきた生徒にも、良い影響を与えていると思います」。
カトリック修道会「サレジアン・シスターズ」が母体の同校は、共学化、校名改称、新コース設置の改革に着手し、創立75周年の今春から大きくかじを切った。「21世紀に活躍できる『世界市民』の育成」を新たに据え、伝統の「心の教育」を土台に、「考え続ける力」「コミュニケーション力」「数学・科学リテラシー」「言語活用力」を伸ばすカリキュラムを展開している。
昨年から全教科の授業に「PBL」を導入。問題を発見する力、最適解を構築する力を育んでいく。「授業では、相手の意見を否定しない、グループでの提案は最も説得力のある意見を採用する、などのルールを設けています。心理的安全性と論理性を重視した環境をつくることで、生徒が自分の考えを発言しやすくなり、思考を深めたり、発表での達成感が得られたりすることが増えていくと考えています」(川上教諭)。
探究心と国際感覚を
育むコース制
共学化に当たり「本科」と「インターナショナル」の2コースを導入した。探究型の授業が中心の本科では、高2までの4年間、「個人研究」に取り組む。探究の手法やデータ分析などの学術的なスキルを身に付けるとともに、哲学的な対話、チームで取り組む力などの力も育んでいく。「生徒たちには、今日は何の授業だろう、何を教えてくれるのだろうという受け身の姿勢から、今日はこれを調べよう、あのデータを取ろうと自発的に関わってほしいと話しています」(川上教諭)。
インターナショナルは習熟度別に二つのグループに分けた。帰国生などが対象の「アドバンスト」では、数学、理科、社会、英語(計週21時間)の授業はネイティブの教員が英語で行う。初学者も含めた「スタンダード」では週10時間の英語の授業とホームルームでネイティブの教員が主導する。「各教科で専門領域の教員が付き、高度な教科学習が実現できています。2グループの生徒たちも普段共に過ごしているので、互いを切磋琢磨し合う関係が生まれています」(川上教諭)。ケンブリッジ大学国際教育機構の国際教育プログラムも導入し、海外大学を見据えた進路指導にも力を入れていくという。
「修道会創設者のドン・ボスコの教え『善良なキリスト者、誠実な市民』に基づく心の教育が、本校の学びの土壌になっています」と川上教諭。新たな学びの中にも、創立以来の使命が揺るぎなく受け継がれている。