開校以来の「自由主義教育」を礎に、個性を尊重し、自立心を育む教育が受け継がれてきた城西大学附属城西中学・高等学校。中高6年間の体験学習プログラム「JFGLP」で、社会と深くつながる学びを実現し、広い視野と高い実践力を備えたグローバル人材の育成を目指している。
神杉旨宣(むねのり)校長
大正時代に開校した城西大学附属城西中学・高等学校は、三つの理念を掲げている。一つは生まれ持った才能を伸ばす「天分の伸長」、二つ目は互いを認め、思いやる「個性の尊重」、三つ目は主体的な行動力を引き出す「自発活動の尊重」。これらの思想が色濃く反映されているのが、創立100周年の2018年に始まった体験型学習プログラム「JOSAI Future Global Leader Program」(JFGLP)だ。海外への修学旅行やホームステイ体験を挟みながら、社会と連動したPBL学習や英語学習、世界視点の教育を6年間で実践していく。
中1では米の栽培や販売の体験を通じ、身近な地域課題から農業、最新技術の動向に目を向ける。中3では世界規模の課題に対象を広げ、異文化への理解も深める。3年間の総まとめとして位置付けられているのが、3学期の「オーストラリア海外研修」。2週間の海外生活で、生徒は自信と達成感を得て、高校の学びにつなげていく。
この春就任した神杉旨宣校長は、同校が目指すものをこう語る。
「グローバル教育や21世紀型教育は、以前から重点的に取り組んできました。教室での学びにとどまらない、実社会を肌身で感じる経験ができる受け皿を用意できたらと思っています。現場に深く入り込んで、小さな失敗や大きな成功を重ねる中で、生徒たちにはこれからの人生でどんなことがあっても折れない心や、仲間と手を取り合って何かを成し遂げた自信、認められたという自己肯定感を育んでいってほしいと思っています」
外と連携したキャリア教育
データ重視の進路支援
高校では、昨年、探究型のキャリア教育「αゼミ」(希望者制)を設けた。修学旅行などの機会に実社会とつながり「自分が社会にできること」を考えるのが狙いだ。昨年の修学旅行は例年の海外に代えて、東北地方の震災復興地域と、山陽・山陰地方に分かれて実施した。中国山地の地域おこしプロジェクトに参加した生徒がプレゼンした、地場産品の商品化が決まるなど、地元の商工関係者との連携も生まれた。
系列の城西大学や医歯薬系学部への進学が多い同校だが、進路支援でさらなる強化策を打ち出した。今年から英語と数学の授業の一部を駿台予備校に委託したほか「企画分析室」を創設。一部の生徒の成績や選択科目、所属クラブなどのデータを追跡することで進学との相関を分析する。結果は学習プログラムの効果や新たな支援策の検討に活用するという。
「『学力スカラシップ制度』などの導入で、優秀な入学者が増えている。この期待に学校としてさらに応えて、幸せになるための進路支援に一層取り組んでいきます」と神杉校長。創立以来の自主性を育む学びを、進路に確実に反映させるための体制作りが、新校長の下、着々と進んでいる。