今年度、創立100周年を迎える女子の伝統校。生徒の主体性を育む学びの改革を進めているが、今年度から中学で数学の個別最適化を図る授業プログラムを導入。さらに高校では三つの新コースを設置。個性を尊重しながら、自分で考え、判断し、行動できる力を育んでいる。
横尾康治 校長
「数学は学力差がすごくついてしまう教科で、一斉授業をしていると、不得意な生徒は置いてきぼりになり、得意な生徒はもっと突き抜けたいのにそれができない。これまでも習熟度別少人数制授業などを行ってきましたが、時間に限りがある中で、数学の魅力や奥深さを伝えるのが難しい現状がありました」。そう話すのは、数学の教師でもある横尾康治校長だ。
そこで今年度から中学で始まったのが、数学の個別最適化だ。コロナ禍でオンライン学習が効果的に機能したことを受け、ICTを活用したセルフモニタリング学習を導入した。
「授業はまず、数学に苦手意識がある生徒にも興味を起こさせる仕掛けの授業を行い、教科書や授業動画を使って知識を習得します。次にデジタル教材『Libry(リブリー)』を用いて問題演習を行い、そこでつまずいた生徒は『navima(ナビマ)』で小学校の単元までさかのぼって学習。早い進度で学習が可能な生徒は高校内容の先取り学習へ進み、定期的なチェックテストで習得度合いを確認します。この授業プログラムの特徴は、AIにコントロールされるのではなく、生徒が自ら計画を立案し、自律的に学習に取り組めること。個別学習の後は、数学の楽しさを伝える探究的な授業や、生徒同士で学び合うグループ学習を展開し、思考力や発想力を鍛えていきます」(横尾校長)
教員は生徒一人一人の学習の進度や理解状況をデータで把握できるため、つまずきの解消や個々に応じた学習支援を手厚く行うことができる。個別最適化された授業を通して、数学の面白さに目覚めてもらうこと、主体的な学びの習慣を身に付けてもらうのが狙いだ。
個性に合わせた
高校の3コース制
さらに今年度は高校に三つの新コースが設置された。従来の学力ベースではなく、学びのスタイルや進路に合わせて選択できるのが特徴だ。
最も特色のある「自己発信コース」は、探究的な活動を通して本質を追究するコースで、ディスカッション、リサーチ、プレゼンの技法を体系的に学び、発信できる英語力を身に付けていく。「特選(人文・理数)コース」は、高1から人文特選と理数特選に分かれ、高3では演習重視の授業を展開、上位難関大学進学を目指す。「リベラルアーツコース」は、幅広い知識と教養を身に付けることに主眼を置き、高校2年次から芸術系や保健体育系など多様な進路を目指す。
「数学の個別最適化もそうですが、私たちは基礎学力の徹底を背景に、自分で考え、判断し、行動できる力を身に付けてもらいたいと考えています」と話す横尾校長。理系女子の育成や難関大学進学に力を入れながら、サッカー、水泳、バトンなど全国大会で活躍する部活動も多く、文武両道を実践する十文字。創立100周年を迎え、学びの改革はさらに進化する。