100年を超える歴史のある淑徳巣鴨。実践している「気づきの教育」は、生徒一人一人の潜在的な可能性を引き出し、主体的に行動できる生徒を育てる。教育理念の「感恩奉仕」は他者を思いやる心を育てる。丁寧な学習サポートや進路指導で、進学実績も伸びている。
石原克哉入試広報部長
創立者、長谷川良信(りょうしん)の教育理念「感恩奉仕」の精神を受け継ぎ、利他共生の心を持って社会に羽ばたく子どもを育成する淑徳巣鴨。その教育の軸となるのは「気づきの教育」だ。
「気づきの教育とは、子どもたち自身に、持って生まれた潜在的な能力を気づかせること。その気づきが、子どもたちに主体的に行動するきっかけを与え、人間的な成長を促すのです」
そう説明するのは、入試広報部長の石原克哉教諭だ。
淑徳巣鴨では、日々の学びの中で、生徒たちに「気づき」をもたらす声掛けを行い、さまざまな仕掛けを施している。その一つが探究型学びだ。中1で人との関わりや印象的な出来事をつづる「自分史ワーク」、中2で学校の中の良い所を自分らしく表現する「ムービーワーク」、中3で自らテーマを設定して研究を行う「卒業論文」に取り組む。さらに高校では、課題設定からプレゼンテーション、振り返りまでを一貫して行う「課題研究」に取り組む。
生徒たちは、自分の考えをどのように発信するか工夫することで、表現力や想像力、ひいては批判的思考力を多角的に伸ばしていく。ここで重要なポイントになるのは、生徒一人一人が「気づく」こと。“探究型学び×気づき”の掛け算で、新たな自分を見つけるのだ。
「私たち教員は、生徒たちが主体性を持って行動できるよう、あえて口出しをせず見守ることも大切にしています」(石原教諭)
感謝の心を持つ子どもに
育ててくれる
気づきの教育を導入してから、生徒たちは失敗を恐れず、積極的になったという。それは進学にも良い影響を与えている。今春の大学入試では、東大をはじめとする国公立大に22人、早慶上理71人、GMARCH216人などの合格を出している。
その背景には、質問型・カリキュラム型・AI教材型という三つの個別指導を組み合わせることで、基礎学力と応用力の向上を促す「SSED(放課後学習支援)プログラム」や、生徒一人一人の志望進路を教員がナビゲートする「JKS(受験校決定サポートシステム)」がある。「SSEDでは、21時まで学習する環境を提供し、大学入試の勉強を学内で完結できるプログラムを構築しています。推薦合格が増えたのは、探究型学びの成果もあります。最近は中学入試でも受験生が増えて、偏差値も上昇。気づきの教育が、良いスパイラルを生み出している手応えを感じています」と石原教諭は話す。
褒められることで、自分の長所や個性に気づく機会にもなっている。教育理念の「感恩奉仕」には、自分を取り巻く全ての存在に“おかげさま”と感謝する心を持ち、身に付けた能力を世のため人のために生かしていく、という意味がある。6年間の学校生活で、感謝の心を持つ子どもに育ててくれる教育に期待する保護者も多い。