和算の研究者でもあった福田理軒が1834年に創立した順天堂塾が起源の伝統校。建学の精神にもある「探究」を軸に、主体性・多様性・協働性を持った人間の育成を図る。昨年は動画による「探究報告会」を実施。こうした探究への取り組みが進学の好調さに結び付いている。
片倉 敦副校長
順天が大切にしている「探究力」は、建学の精神「順天求合(自然の摂理にしたがって心理を探求する)」から受け継がれてきた伝統だ。
教育目標として、「創造的学力(主体性)」「国際対話力(多様性)」「人間関係力(協働性)」の形成を掲げ、ボランティア活動を中心とした福祉教育や、多彩な国際交流、立場を超えて互いに学び合うグローバルウイークなど、さまざまな活動を推進している。理科と社会では、自然や社会に対する科学的な思考力を身に付けるため「探究学習」を導入、創造的な学びを展開している。
そうした取り組みの中で昨年は、動画による「探究報告会」を開催した。これは中2の理科探究、高1・高2が全員参加するオンライン発表会で、動画総数は500本を超えたという。
片倉敦副校長は、「全員参加というのが、この探究報告会のポイントです。これまで一部の生徒が探究活動に熱心に取り組み、学校外の発表会やシンポジウムで上位の成績を収めることがありました。その探究活動を全生徒を対象に行おうと考えたのです」と説明する。
自分なりの切り口で
課題を見つけて考察する
生徒たちは、自分で興味のある課題を見つけ、仮説を立てて研究や調査を行い、解決策を提案する。発表は、各自がスライドショーで作成して数分程度の動画に変換、報告会当日はオンライン上の動画を視聴するという形で行われた。オンラインで開催したのはコロナ禍が理由だったが、結果的に多くの探究報告を視聴できるメリットもあった。
生徒たちが取り組んだ題材は、例えば「アイドルオタクが経済を動かす」など社会的なテーマから、「単細胞生物が記憶力を⁉」など科学的なテーマまで多岐にわたった。
「探究活動では、身近なところから問題意識を持つことが大切で、重要なのは、他人の見方や考えを引用するのではなく、たとえ稚拙であっても、自分なりの切り口で課題を見つけ、本質を見定めて考察すること。今回生徒たちは、お互いの探究を評価し合うことで自らの反省点も明確になり、とても有意義な探究報告会になったと思います」(片倉副校長)
こうした順天の探究への取り組みは、創造的思考力や論理的思考力の育成に役立ち、進学実績にも反映される。2022年度の現役進学者は、国公立大12%、早慶上理12%、GMARCH25%という成績を残した。「進学者の半数はGMARCH以上へ、という目標を達成したことになります。特に中間層の生徒の意識が高くなり、これは日々の探究学習への取り組みの成果だと考えています」と話す片倉副校長。
順天のスローガンは“探究力で未来を創る”。ただ知識を蓄積するだけでなく、その知識を生かしていく探究の姿勢は、全ての教科を通して着実に実践されている。