創立125周年を迎えた女子の伝統校は、7年前から学校改革に着手。PBL型授業やグローバルクラスで「熱意」を引き出し、生徒一人一人の可能性を広げる。千代田区という立地を生かし、企業や公的機関などを積極的に訪ねて、社会とのつながりも学んでいる。
中込 真校長
和洋九段では、現代の「読み・書き・そろばん」である高度な英語スキル、PBL(問題解決型授業)、ICTリテラシーの三つを軸に授業を展開。
英語では、学年ごとに英語資格の目標を設定し、日常会話から学術的な内容まで、個人の資質に応じて実践的な英語力を学ぶ場を設けている。
全ての科目に導入しているPBLでは、生徒の積極的な姿勢を大切にし、課題に対する最適な答えを試行錯誤する中から、生徒自身が創造性や自信を獲得していくことを目指す。
理科の教員経験が豊富な中込真校長も「理数探究」の授業で、実験を担当。昨年は「爆薬」をテーマに、穴を開けた空き缶にアルコールを垂らし、紙コップを飛ばす実験をした。「実験のポイントは、穴のサイズと開ける場所。『穴を三つ開けたい』と、私の想定を超えてくる生徒もいました。危険がないかを考え、やらせてみるのが、私たちの役目です」と言う。
ICTリテラシーでは、全員にiPadを貸与。授業だけでなく、修学旅行のしおりや、動画作成など、生活のさまざまな場面で使いこなせるように導く。
フィールドワークで
「積極性はプラスになる」を学ぶ
同校が、もう一つ大切にしているのは「Connected(つながる)」。企業やNPO法人、公的機関、大学などへ積極的に出掛ける機会を設けることで、生徒が社会とフラットな関係を築き、視野を広げることを狙っている。中学2年時では、自分たちが電話で面会を取り付けた企業などを訪ねる「グローバル遠足」がある。インタビューを終えた生徒たちは、初めてもらった名刺を手に、一人の“大人”として認められた笑顔でいっぱいだ。「いくら授業でコミュニケーションが大切だと話しても、実際に経験しないと分からない。教員がヒヤヒヤする質問をする生徒もいますが、積極性がプラスになるという手応えを重ねてほしい」と中込校長。
高2の修学旅行では、広島の安田女子中学高等学校の生徒と、「76年前に起きた出来事の事実を正確にこれから先何十年、何百年も語り継ぎ、もう二度と同じような出来事が起きないようにするにはどうしたら良いか」を話し合った。付箋に意見を書き込み、模造紙に貼り付けて、内容ごとに分類。両校の混合グループで意見をまとめて発表したところ、「平和への意識に地域差をなくすことが大切」「アニメを使ったら良いのではないか」などの意見が出たという。今も両校の交流は続く。修学旅行で、広島から京都へ戻る手段を生徒に任せたところ、日本海へ出て天橋立を見てくる生徒や、私服に着物を着てくる生徒もいたという。
豊かな経験を通じて、「前に進むチカラ」を伸ばし、守るべき伝統は守る。進化し続ける自分を、素直に喜ぶことができる生徒たちを育てることが、和洋九段の精神だ。