1885年の創立以来、「知・仁・勇」を教育理念に男子のリーダーを育成してきた伝統校。2021年度から完全中高一貫校となって学校改革を促進、表現する力の育成や本物に触れる教育にも力を入れている。進路では国公立大志望の生徒が多く、今年度は合格実績が倍増した。
岩本 正 校長
成城が目指すのは、グローバル時代のリーダーの育成。そのために「知・仁・勇」をバランスよく育てるとともに、2018年度から総合的な学習の中で、「数学統計」「国語表現」「英語表現」という特色ある授業を展開、“表現する力”の育成にも注力している。
「数学統計」とは、中学1年を対象に、情報リテラシーを学んだ後、パソコンを使って統計学の基礎を学習するもの。情報と数学を関連させてデータ処理や統計分析を学び、プログラミング能力の向上に結び付けていく。「国語表現」では、中学3年を対象に、日本語の言語技術の向上を意識して、伝えたいことを文章で明確に書き表す力や、プレゼンテーション能力を養っていく。「英語表現」は、高校1年を対象に、ネイティブ教員がオールイングリッシュで、自らの考えを表現するライティング力を徹底して鍛えていく授業だ。
「昨年度からは中学1年を対象に、国語科と図書館司書が連携して、図書館を活用して探究学習の素地をつくるプロジェクトを始めました。具体的には、系統立てて拾い読みをして内容を把握する“点検読書”を実践、グループごとに情報交換することで、数多くの図書に触れる機会を設け、国語表現の力をさらに伸ばしています」と、岩本正校長は語る。
植物の栽培で
情緒を豊かにする試み
ICTの導入にも力を入れ、1人1台のタブレットPCや全教室へのプロジェクター導入、オンライン体制の構築、対面授業でのICT活用などを実現している。その一方で90年以上の伝統のある臨海学校がコロナ禍で休止となるなど、“本物に触れる教育”が手薄になっていた。そこで考案されたのが、中2の技術の時間を利用して行われた「内藤とうがらし」の栽培だ。江戸時代の宿場町・内藤新宿で栽培されていた品種で、近年は新宿区で復活プロジェクトが始まり再び注目されている。
授業では、生徒たちが2人1組でプランターを使って栽培、秋には収穫を行い、調理実習で活用したという。「栽培への挑戦は、コロナ禍で傷ついた心を癒やし、生命の大切さを感じながら情緒面を豊かにするのが狙いでした。今年度は、地域の企業とコラボレーションして容器やパッケージを作り、文化祭などで販売できるようにしたいと考えています」と岩本校長。
同校ではまた、留学生を招いて行う「エンパワーメントプログラム」を他校に先駆けて実施しており、その刺激を受けて海外大学やグローバル系学部に進学する生徒も増えている。今春の合格実績では、国公立大の現役合格者数が40人と昨年度から倍増した。「国公立大の後期日程が終わるまで、生徒をサポートし続けた教員の力が大きかったと思います。本校には、生徒たちの指導を最後まで諦めない伝統があるのです」(岩本校長)。