創立以来の「他者理解」の理念が、英語重視の探究型学習やチーム主体の行事に息づく。得意を生かす入試や公立中高一貫校受験者向け入試で、多様な生徒を受け入れ、教員の寄り添う姿勢もその潜在能力に一役買っている。110周年の今年、新デザインの制服を公表した。
浅見尚次郎副校長
「人それぞれに異なる考え方を持つことを理解し、その上で自分の考えを持ち、行動すること」。浅見尚次郎副校長は「他者理解」の意味するところを、こう説く。
その精神は、独自の学習プログラムにも反映されている。週10時間の英語の授業のうち6時間が外国人教員による英語授業「Learning Through English」(LTE)。生徒のプレゼンテーションの機会も多い。「語学力向上だけでなく、異なる背景を持つ人たちとどう理解し合うかという面も大事にしています。考えを人前で話す場数を踏むことで、恥ずかしがっていた生徒が自信を付け、逆に良き聞き手にもなる姿を見てきました」(浅見副校長)。
昨年はコロナ禍により「カナダ海外研修」など従来の研修の代わりに、国内でできる体験型研修を実施した。外国人家庭での半日ホームステイや体験型英語施設「TOKYO GLOBAL GATEWAY」の訪問を盛り込んだ6日間の校内英語研修。また、5日間の「グローバルキャリア研修」では、日本航空の国際線乗務員から機内サービスの際の英会話や接客マナーなど、現場ならではの実践的なコミュニケーションを学んだ。海外に行けなくても「アイデア次第で生徒の体験が豊かになることに気付きました」と浅見副校長は振り返る。
他者理解の精神は、行事にも浸透している。学年対抗で行われる体育祭は、個々の運動能力よりも団結力が求められる競技が多い。「体育祭は、チームに貢献する喜びや、皆と一緒だからこそ高みに行けることが体感できます。行事を通じての他者との関わりは、生徒にとって成長の糧となっているはずです」(浅見副校長)。
多様な生徒とつながる
ユニーク入試
授業や行事は、同校が重視する生徒の潜在能力を引き出す場にもなっている。「生徒は苦手や失敗を理由に躊躇(ちゅうちょ)しがちですが、本当は一歩を踏み出したい気持ちを持っています。教員はそうした気持ちを後押しする声掛けをしています。やればできるを重ねるうちに本来の力が発揮され、ここまで成長できるのか、と私たちが感心させられるほどです」と浅見副校長。潜在能力を引き出そうとする姿勢は、独自の入試方法にも表れている。力を入れてきたこと、得意なことを評価する「アクティブ入試」は「小学校のときに何かに打ち込んだ経験を入試に生かし、本校の環境でその能力を十分伸ばしてほしい」という狙いがある。昨年始めた「適性検査型入試」も、公立中高一貫校向けの受験勉強で育んだ思考力や表現力が「武蔵野の学習プログラムでさらに伸びるはず」という思いからだという。
創立110周年を記念し、来年度から新しい制服となる。「他者との関わりの中で夢をかなえるイメージを込めました」と浅見副校長。ここにも「他者理解」の理念が織り込まれている。