120年に及ぶ歴史を持つ日本初の女子高等教育機関・日本女子大学の付属校。「森の中の学校」と呼ばれる広大なキャンパスでは、「自学自動」の教育方針の下、互いの個性を尊重し、自分の明日を創る多様な学びやクラブ活動が活発に行われている。
中学校・高等学校
椎野秀子中学校校長
日本女子大学の創立者 成瀬仁蔵は約120年前、日本初の女子高等教育機関日本女子大学を開校した。成瀬が創立時に掲げた「自学自動(自ら考え、自ら学び、自ら行う)」の教育理念は、女性が自らの人格を高め、使命を見いだして社会に貢献してこそ国も社会も発展するとの考えに基づいている。
「時代がようやく成瀬に追い付いてきました」と語るのは、昨年4月に中学校校長に就任した椎野秀子校長だ。同校では創立者の教育理念の下、設立時から生徒の自主性を重んじた「本物に触れる教育」と「表現力」を磨く授業を全教科にわたって展開している。例えば、生物の授業は外へ出て豊かな自然を観察し、ノートに採集した植物を綴じ込んでいく。国語の授業で扱う文学作品は本を読み、自分なりの作品論、作家論をまとめたり、スピーチで発表したりすることで思考力・表現力を磨いている。
先輩の話を聞き
「未来のワタシ」へ歩みだす
伝統的に「キャリア教育」にも力を入れている。中学3年にはさまざまな分野で活躍する卒業生を招き、仕事について聞いたり、双方向のディスカッションを通して将来を考える「キャリア教室」を開催している。その前段階として、中学1年から卒業生を招いて話を聞くなど、学年ごとに段階を踏んだ多様なキャリアプログラムを展開。椎野校長はこのキャリア教育の方法を「生徒の心に灯を点す行事」と表現する。
2022年3月からは、中学校のホームページに「未来のワタシ」というコーナーを作り、社会で活躍する卒業生に、同校での学びのどの部分が自分の核になっているかを語ってもらい、掲載している。例えば、東京大学教養学部教養学科4年に在籍し、卒業後は外務省でのキャリアをスタートさせる卒業生は、中学時代はテニスに打ち込み、個人戦で県大会優勝、団体戦で全国大会3位という結果を残した。一方で「あなたはどう考えるか」を全教科でとことん問われ、自分なりの答えを紡ぎ出す過程に純粋な知的楽しさを見いだして勉強が好きになり、高校では勉強に専念し、東京大学を目指すと宣言した。その無謀に思える目標を誰一人笑うことなく、仲間も教員も全力で応援してくれたという。
同校には自分の目標を達成するため、他大学に進学する生徒も20~25%いる。このうち半数以上は学校推薦型選抜での合格だ。中学時代から表現力を磨いているので、私立の名門大学へも多数の合格者を出している。
「創立者の成瀬は『好きを極めて天職と成す』という教えで人を育てました。その理念通り、本校にはやりたいことを追求し、輝いている卒業生が多い。『私が私であること』と『あなたがあなたであること』を尊重し合い、しなやかに、したたかに、おおらかに、自分を創っていける学び舎。それが日本女子大附属なのです」(椎野校長)