東京・世田谷区の広大な敷地に、幼稚園から大学院までを擁する成城学園。明治・大正時代に「日本教育界の父」と称された澤柳政太郎によって創立された。個性尊重の伝統を今に受け継ぎ、生徒一人一人を大切にしながら、独自の英語教育や情操教育に力を入れている。
中村雅浩 校長
成城学園が学びの軸としているのは「自学自習」と「自治自律」。生徒一人一人の個性を尊重しながら、持っている“天分”を最大限に発揮させることを大切に考えている。
教育の柱の一つは、独自の英語教育だ。成城学園には、幼稚園から大学まで「成城学園英語一貫教育プログラム」があり、国際標準指標CEFR(セファール)を参考にして各学年での学習到達目標「CAN-DOリスト」を作成、成長に沿ったきめ細かな教育プログラムを構築している。
中高では、海外の教科書(OUP、CUP)やe-ラーニング教材を使用しながら、英語4技能をバランスよく伸ばす。昨年度は、留学がままならないコロナ禍の中で、外国人留学生との5日間のエンパワーメントプログラムや、オーストラリアの姉妹校とのオンライン交流を実施、英語でのコミュニケーションを通して国際理解を深めた。
「コロナ禍の中でも、生徒たちは前向きに進む力が付いてきたと感じています」と語るのは中村雅浩校長だ。「生徒たちを見ていると、特に英語を使うことのハードルが下がっていると感じます。交流の場でも物おじせず、自然にコミュニケーションができる。英語はツールであり、他者や異文化を理解するためのもの、という段階にシフトしているのだと思います」。
特色のある「海の学校」
「山の学校」「課外教室」
教育のもう一つの柱は情操教育。中学では、ライフセービング実習を中心とした命の教育を行う「海の学校」と、体力に応じて北アルプスの槍ヶ岳、白馬岳、唐松岳の三つの登山コースに挑戦する「山の学校」という体験学習がある。
高校では修学旅行の代わりに、全学年が自由に参加できる「課外教室」がある。専任教員が立案者となって約20コースを用意、生徒たちは自分が興味を持ったコースを選択する。2022年度は、「ボイスキャストワークショップ」「世界遺産『屋久島』を遊ぶ」「ロボットプログラミングと企業探訪」などのコースを予定している。
そして最近力を入れているのは、デジタル・シティズンシップ教育※。同校ではデジタルツールを規制するのではなく、情報モラルを学び、ICTを賢く使うことで、情報社会を構築する“良き市民”になることを目指す。
「本校では創立以来“個性尊重”を大切にしています。集団の中で抜きん出る個性を尊重するのではなく、生徒一人一人が持つ個性を尊重するという意味です。“人は違っているのが当たり前”という考え方が学園に浸透しているため、異文化と交流する国際理解教育や、多様な個性に対応する課外教室が成功しているのだと思います。一言で言えば、成城学園の生徒たちは自然に他者理解ができるようになる。だからこそ、伸びやかな発想ができる、おおらかな人間に育っていくのです」(中村校長)
※デジタル・シティズンシップ教育:情報技術の利用における適切で責任ある行動規範の教育