「全人教育」「探究型学習」「国際教育」を三本柱に、人間力のある生徒を育てている玉川学園。中学では“触れて・感じて・表現する”ことを重視して、企業とコラボした特別授業を開催。五感を使った学びで、“深み・丸みのある大人”への成長を目指している。
中西郭弘(かつひろ)中学部長
緑豊かな広大な敷地に、幼稚部から大学・大学院、研究所までがワンキャンパスにそろう玉川学園。体験型学習の玉川アドベンチャープログラム(TAP)やSTEAM教育、国際バカロレア(IB)プログラムなど、質の高い教育を実践している。
“紙カミソリ(R)”の
キャッチコピーを考案
「中学では、『深みのある大人』になるため、“触れて・感じて・表現する”ことを大切にしています。そのため先生方には、あらゆる場面で五感を使う仕掛けを作ってほしいと伝えています」。そう話すのは中西郭弘中学部長だ。
五感を使う学びの一つとして、技術の授業では、企業とコラボレーションしてプレゼンテーションを行う特別授業を3月に開催。昨年度はグローバル刃物メーカーの貝印に協力を依頼し、同社が2年前から開発を進めていた世界初※1の「紙カミソリ(R)」を広めるためのキャッチコピーを班ごとに考え、クラス予選を勝ち上がった8組の班が来園した貝印の社員を前にプレゼンテーションを行った。
生徒たちは4月から授業で学んだことを生かしつつ、実際に紙カミソリ(R)に触れ、班ごとにどのような人に、どのような場面で使用することが有効か、などを話し合った。発表用のスライドに根拠となるデータ(データサイエンス)を用いて説得力を加え、さらに聞き手に言いたいことが伝わるよう、「OREO※2」の形式で発表に挑んだ。「自分たちの考えが企業に採用されるかもしれない、という思いは生徒たちにとって大きなモチベーションになったと思います」。
優勝した班のキャッチコピーは「世界初!!身近なところから地球を守ろう!!!」。紙カミソリ(R)には衛生的、持ち運びに便利という利点に加えて、「CO2の排出を抑える」「環境問題について伝えられる」という持続可能な社会をつくるメリットがあることに着目。商品の運送時に発生するCO2の抑制や、プラスチックごみ削減につながるデータを示して論証した。身近な“自分事”として商品や環境問題を取り上げた点が、貝印から評価されたという。
「実際の商品に触れて、感じて発表するのは、まさに五感を使って学ぶこと。この特別授業を通じて生徒たちは社会とのつながりを経験、有意義なキャリア教育にもなったと思います」と中西部長は振り返る。技術の授業では他教科との連携をさらに強め、今年度も企業や行政とコラボレーションする考えだ。
中学ではもう一つ、「丸みのある大人」になるために、「玉川しぐさ」と呼ばれる立ち居振る舞いを大切に考えている。これは「気が利いて即行動ができる」「相手に恥をかかさない行動ができる」「社会全体を考えられる」ことを意識した生活。五感を使う学びと、学問だけに偏らない全人教育が、生徒たちの伸びやかな心を育んでいる。
※1 世界初の「紙カミソリ(R)」:金属だけでできたヘッドと紙ハンドルからなるカミソリ(特許第6894054号)
※2 OREO:言語技術「結論(Objective)→ 理由(Reason)→ 根拠となる事柄(Episode)→ 結論(Objective)」