少人数できめの細かい指導に定評がある多摩大聖ヶ丘。「学びの主役は生徒」という考えの下、教員は正解を教えず、生徒自らが考え、答えを導き出せる学習環境をつくっている。今年度から基礎学習と探究学習を両輪とする新しい取り組みをスタート、さらなる進化を目指す。
石飛一吉(いしとびかずよし)校長
多摩大聖ヶ丘が大切にしているのは「学びの主役は生徒」ということ。開校以来その言葉を基に、生徒自らが課題を発見することを重視して教育活動を続けてきた。今年度からそれにプラスする新しい試みがスタートする。
「自転車をこぐのが生徒だとしたら、後輪を基礎学習、前輪を探究学習と考え、その両輪をしっかり回せるようにしようと考えたのです」と、石飛一吉校長。
まず後輪の基礎学習では、放課後の自主学習を充実させる。生徒が自習できるセルフスタディールーム(SSR)を用意し、大学生スタッフを常駐させる。生徒たちは、分からない箇所やつまずいた部分のアドバイスをもらいながら自主学習を進める。さらに別の教室では、日替わりで教員による「放課後講座」を開講する。こちらは教科の応用編で、得意な科目をもっと伸ばしたい生徒が自由に参加できる。
地域の抱える課題に向き合う「探究ゼミ」
そして前輪の探究学習では、高校1、2年を対象に、水曜日の午後を全て「探究ゼミ」の学びに充てることになった。教員が全力でこのゼミに取り組むため、他学年は下校するという力の入れようだ。探究ゼミは、生徒十数人に教員1人のゼミナール形式。問題発見、解決、プレゼンまでを実行するもので、大学入試の総合型選抜を見据えた授業にもなっている。
もともと多摩大聖ヶ丘では、7年前から中学生も参加する「A知探Q」という夏の特別講座を開催してきた。調べ学習では終わらない、体験を伴ったゼミナール形式の探究学習で、教える側も楽しむことが条件だった。新たにスタートする「探究ゼミ」はその延長線上にある。
「新たに始まる探究ゼミは、地元の多摩地域の抱える課題に向き合います。グローバルな視点を持つことも大切ですが、まずは自分たちが日々過ごしている地元に目を向け、地域のために何かを還元することも大切だと考えたのです。具体的には、市役所や地域の方々、多摩大学の学生とも連携しながら、“高齢化する市内の商店街に人を呼び戻すにはどうすればいいのか?”などの課題を見つけ、解決策を探っていきます。重要なのは、子どもたち自身が考えて実際に行動すること。教員の役割は、自転車をこぐ生徒たちを、風のように後ろから支えてあげることだと思っています」と石飛校長は話す。
多摩大聖ヶ丘は1学年120人で、全員の顔と名前が覚えられる、都内でも小さな共学校だ。そのため教員と生徒の距離が近く、アットホームな温かい雰囲気がある。
その近しい距離感は学校と保護者の間にもある。今年度はコロナ禍で中断していた保護者向けの「聖塾(ひじりらぼ)」が復活、石飛校長を講師に、子育てに関する悩みや学びの本質について考える、親のための学びの場も用意されている。