長い歴史を持つ伝統の男子校で、医学界に多くの卒業生を送り出してきた。2022年度から獨協医科大学に系列校推薦枠が設けられ、医学部進学の可能性が高まった。ドイツとの交流が盛んで第二外国語としてドイツ語を履修できる。環境教育に力を入れているのも特色だ。
坂東広明教頭 入試室長
日本近代医学史に大きな足跡を残し、医学界に優れた人材を多く輩出してきた獨協学園。2022年度から獨協中学・高等学校には獨協医科大学に「系列校推薦枠」(獨協埼玉と合わせて10人)が新設された。
「初年度は、この系列校推薦枠を利用して本校から6人が獨協医科大学へ進学しました。推薦できる成績を収め、基礎学力テストと面接をクリアすれば進学できます。全国の医学部の入学定員が減員する中で、この系列校推薦枠は今後も魅力になると思います」
そう話すのは入試室長でもある坂東広明教頭だ。
同校は毎年、医学部・歯学部・薬学部への進学者が多く、医師となった卒業生は1200人を超える。高大連携プロジェクトで、医科大学教授による特別講義や入学前教育なども実施され、医学部に進学する環境が整っている。何よりも、医師を目指す仲間が身近にいることが、大きなモチベーションになる。
もう一つの特徴は、創立当初からのドイツ文化との深いつながりだ。学園の前身が獨逸(ドイツ)学協会ということもあり、現在もドイツ語教育に力を入れている。高校で第二外国語として学べ、毎年4割近い生徒が履修している。学校独自のプログラムとして中学3~高校2年の希望者を対象に、夏休みの10日間を使ったドイツ研修旅行もある。ハノーファー・ミュンヘンなどを訪れ、環境教育施設や学校を視察し、現地の高校生宅でホームステイを行い、異文化と向き合う貴重な体験をする。
独自の環境教育で
視野を大きく広げる
さらに「環境教育」も獨協の大きな特色だ。持続可能な社会を実現する知力を育てるため、環境への取り組みを教育の一環として実践しているのだ。具体的には、校内にビオトープを造り、屋上のスペースを有効活用してゴーヤやトマトなどの野菜を栽培し、40種類以上の広葉樹を敷地内に植えて「獨協の森〈鎮守の杜(もり)〉」を造っている。
ビオトープの管理や屋上緑化に取り組む生徒たちの「緑のネットワーク委員会」は、6年前から近隣の小学校に出向いて、児童に環境に関する授業や指導をする「環境ファシリテート活動」を実施。また文京総合福祉センター内に箱ビオトープを設置し、障がいのある人たちの訓練とケアの一助として役立ててもらっている。同校はドイツ外務省が展開する高校向けのネットワーク「PASCH(パッシュ)」にも参加、海外の学生たちとの環境教育の交流もある。
「貢献活動を通して生徒たちは地域や世界とつながり、最初は好きで始めた自分事が、周りに波及していく経験をします。環境教育を通じて視野も大きく広げているのです」(坂東教頭)
獨協には教養と理性を重視するという伝統があり、図書館が充実しているのも特色だ。伝統の男子校らしい、穏やかで落ち着いた校風を保っている。