今年4月、共学校として新たなスタートを切った千代田国際中学校。校長には武蔵野大学中学校・高等学校の中高学園長でもある日野田直彦氏が就任。これまでの学校改革の経験を生かし、新しい価値観やメソッドに基づいた「未来の学校」を目指している。
日野田直彦校長
千代田国際中学校の1期生は、予想を上回る74人が入学した。
「元気いっぱいな子どもたちが入ってきてくれました。ゼロから一緒に学校をつくっていこう、と保護者や生徒の皆さんに呼び掛けてきましたが、その期待の大きさを感じています」と、日野田直彦校長は顔をほころばせる。
「人生のPurpose(目的)を学ぶ」「Diversity(多様性)を重んじる」「Challenge(挑戦)を楽しむ」の三つを柱に、カリキュラムを展開している。
基礎基本を身に付ける講義型のSBL(Subject Based Learning)、身に付けたことを活用する、課題解決型のPBL(Project Based Learning)、実社会とのつながりから学ぶLAP(Liberal Arts Project)の三つがある。LAPでは、ソーシャルグラフィックデザイナーを講師に「情報デザイン」のワークショップに取り組んだり、経済メディアの編集部員からニュースを通じた「ものの見方」を学んだりと、教科の枠を超えた学びが特色だ。「不確実さが増した社会で人生を切りひらいていくには、内から生まれた高い目的意識を原動力に、トライアル・アンド・エラーを重ねながら学びを楽しむ姿勢が不可欠です。そうした環境から世界を変える人材が生まれてくる。その場をつくることが、私たちの使命だと思っています。だから生徒にはたくさん失敗してほしいと促しています」と日野田校長。
もう一つ重視しているのが「守破離」の精神だ。もともとは武道や茶道での修行の段階を3文字で表現したもの。これを学びに置き換え「基本フレームを身に付け、探究で掘り下げ、自分らしさを追求していく」プロセスとして、学校説明会などで伝えているという。「枠を覚え、枠を使い、枠を外す。このプロセスが『守破離』です。一緒にワクワクしませんか、と伝えています」。
コミュニケーションマインドの育成
放課後の時間は、部活動ではなく、外部の専門講師による「アクティビティ」を用意した。初年度はエスコートダンス、3×3※、英会話、プログラミングの四つを提供する。生徒数の増加に応じて種類も増やしていくという。
大阪府立箕面高等学校や武蔵野大学中学校・高等学校で、海外大学に多くの生徒を送り出してきた日野田校長。その経験から得た知見や人脈を千代田国際にも注ぎ込んでいく。「本校のプログラムで普通に学べば、海外進学に必要な英語力は十分に付きます。ただ、英語は手段にすぎません。もっと大切なのは、オーナーシップを持って課題に取り組む姿勢や文化的背景や価値観が異なる人たちと関係を築いて交渉したり、意見を伝えるコミュニケーション能力なのです」。従来の枠を超えた、世界視点の学びの場をどうつくり上げていくのか。日野田校長の手腕に注目が集まっている。
※3×3:3人制バスケットボール