2024年に創立100周年を迎える武蔵野大学の併設校。仏教に根差した他者を思いやる心の教育を守る一方、課題解決型学習(PBL)や海外大学や民間企業との連携プログラムなど、先駆的な教育を積極的に取り入れ、国際社会に貢献する人材の育成を目指す。
中村好孝 校長
武蔵野大学中学校・高等学校に昨年度着任した中村好孝校長は、独自策を相次いで打ち出している。その一つが、生徒の熱量を高めるためのマネジメント組織「EX(熱量推進)部」だ。「修学旅行をはじめとする行事がコロナ禍で中止や縮小開催に追い込まれ、それまで当たり前に続けてきたものがどれほど生徒の熱量の源になっていたのかを改めて認識しました。マスク姿が当たり前になり、クラスメイトや先生の素顔をほとんど見たことがない生徒もいます。この状況を変える必要があると思っています」。発足したEX部では、普段の授業から保護者の授業体験、校内行事まであらゆる機会に生徒の熱量を高める仕掛けを作っていくという。「手始めに、朝の登校時、生徒会メンバーが『おはようございます』と生徒たちに声を掛ける取り組みを始めました」(中村校長)。
PBLを深化させる
新たな学力強化策
中学を共学化した2019年度から「グローバル&サイエンス」の視点に基づいたPBL授業に取り組んできた。PBLでの胸が躍る経験から教科学習に粘り強く取り組む動機を引き出し、「ワクワク」と「コツコツ」の相乗効果を上げてきた。昨年度、中3が取り組んだプロジェクトの一つが、ラジオ番組の制作。地元のコミュニティーFMで放送され、ラジオアプリを通じて全国に配信された。
高校では「ハイグレード」「PBLインターナショナル」「本科」の3コースに分かれ、興味や関心、得意分野を深めていく。昨年度はPBLコースの生徒有志が、身の回りの課題を解決するプランを競う「ソーシャルイノベーション・リレー」で準優勝するなど、三つの大会で賞を受けた。こうした成果を中村校長は高く評価した上で、学力向上策にも力を入れていくと語る。「もともと持っている高い探究力をより生かすための基礎学力を身に付けるための仕組みです」。
今年度から教育事業を手掛ける企業と連携した特別授業「アカデミックマインド」が始まる。東大生が講師となり、身の回りのものに「なぜ」の視点を持つ授業で、テーマを掘り下げていく。「学びに必要な『Why』と『What』と『How』のうち、本校の生徒はPBL学習で『How』の力を付けています。さらに『Why』を考える習慣を身に付ければ、ものの見方が変わり、思い込みにとらわれない発想力が付いてくるはずです」(中村校長)。
1924年、築地本願寺の境内で始まった女学校が前身の同校。仏教精神に基づく「真の人間教育」「人間成就の教育」を掲げている。「人格の向上が成績の向上につながると生徒にも話しています。こんな時代だからこそ相手の立場に立った気遣いなど、当たり前のことを大事にしていきたい」と中村校長。受け継がれてきた心の教育と先進的な試みで、時代に求められる人材の育成を目指す。