教育理念に「キリスト教教育」「学習指導」「共生教育」の3本柱を掲げ、世界と向き合う心と力の育成を大切にする。学習の軸にはESDとCLIL(クリル)※を据え、「探究学習」で生徒の思考力や応用力を鍛える。校訓は、建学の精神に基づいた「愛と誠」だ。
岩田 賢教諭
横浜女学院は、持続可能な社会を創造するために、地球規模の視点を持つように導く「ESD」には7年も前から取り組み、教科学習と英語学習を組み合わせて“英語で学ぶ”「CLIL」も他校に先駆けて導入してきた。
そんな先進的な取り組みに積極的な同校の「探究学習」も「一味違う」ものになっている。
例えば、昨年の国際教養クラスの社会(中2)の授業では週4コマのうち、2コマを探究学習に充て、授業は生徒に身近な近代史からスタートさせた。「フランス革命」の学習では、革命前夜という設定で、全生徒に、貴族や平民など40通りの身分や職業、年齢の役柄を割り振り、「フランスはどんな国になるべきか」を考えるシミュレーションゲームをした。それぞれが異なる立場から、王政や税金、国の在り方について意見を交わし、政党の結成や選挙も体験した。
授業を担当する岩田賢教諭は「身分や立場によって、『何がフェアか』の考えが異なることを学びます。暗記するだけではなく、個々の知識を結び付けて統合的に考える力を養い、体感的に理解することを目指しています。そうすることで思考力が鍛えられ、『なぜ、フランス革命は起きたのか?』という根源的な質問にも具体的に答えられるようになるのです」と語る。
授業後の感想には「高い身分だったのに、大勢の人が敵意をむき出しにして怖かった」「低い身分なので、同調圧力に屈して、偉い人を攻撃する側に加わってしまった」など、現代社会にも通じる大切な課題を指摘する生徒も多いという。「授業後には毎週、誰かが質問に来ており、こうした行動力は『宝』だと思っています」と岩田教諭は目を細める。授業はその後、産業革命、日本の開国、ロシア革命へと進み、近代史の理解を深めていく。
教科を横断する学びが実現した
こうした探究の授業の成果は、他の教科にも波及した。例えば保健体育の授業で「なぜ、スポーツは英国発祥のものが多いのか」を考えた際には、「19世紀では英国の勢力が強かったから」と歴史的な背景を基に瞬発的に意見が返ってきたという。今年度は、高校生にもシミュレーション形式のプログラムを導入する予定だ。
同校は「愛と誠」が校訓だ。中高6年間を「基礎期」「展開期」「発展期」の3段階に分けて、生徒一人一人の成長に合わせて、自己肯定感を高め、他者への思いやりを持つように導いている。岩田教諭は「自分の判断で行動し、失敗を恐れずチャレンジする『強い心』を持って、常識に甘んじず、同調圧力に屈しない人間になってほしい。多数派の中で少数派でいることは簡単ではありませんが、自分でハードルを乗り越えて、将来の道を開ける人間になってもらいたい」と言う。自立した女性への成長を、学校全体で温かく見守っている。
※CLIL:Content and Language Integrated Learning(内容言語統合型学習)