晃華学園中学高等学校は、約60年前、カトリック校として調布市に設立された。「一人一人が、かけがえのない存在」であるというキリスト教的人間観に基づき、国際的視野から社会の課題を考える教育を積極的に展開。生徒主体のSDGs活動も大きな広がりを見せている。
田中寛紀教頭
カトリック校である晃華学園は、キリスト教的人間観に基づいた全人教育に力を注いでいる。その教えの根底にあるのが、「与えられた能力を、世の人々のために生かす」という「ノーブレス オブリージュ」の精神だ。この理念の下で生徒たちは、「自らの学びを糧に、世界や社会が抱える課題の解決に取り組みたい」という意識を自然に育み、行動に移している。
数年前から取り組んでいるSDGsの活動もその一つだ。2016年、1人の生徒の提案を発端に全校へ広まり、18年からは校内でSDGsを啓発する映像コンテストをスタート。19年には外部の短編動画コンテストで、同校の作品が特別賞を受賞するという快挙を成し遂げた。
「こうした取り組みが自治体や民間企業から注目を集めるようになり、最近では学校の外に出ての活動が多くなりました」と語るのは田中寛紀教頭だ。
校外での活動の一つが20年から調布市と連携して始まった「SDGs11プロジェクト」だ。調布市でも年々深刻化している空き家問題をテーマに、若い世代の視点や意見を組み込んだ解決策を考えている。その集大成として行われたのが、「~15年後の我が家へ~住まいのフォトレター展」。これは自宅の外観や気に入った場所の写真を撮って、15年後のわが家に宛てた手紙を書いてもらうというもので、15年後に思いをはせることが、大切なわが家を未来につなげていくことになるという発想から晃華学園の中学生が企画した。市民からの反響は大きく、2000件を超える応募があった。
企業との連携で
社会の仕組みを学ぶ
20年夏ころからは企業とのコラボレーションもスタートした。例えば調布駅前の三井住友信託銀行コンサルプラザ調布との連携プロジェクトだ。信託銀行は顧客の年齢層が比較的高く、SDGsという言葉になじみがない人もいる。そうした顧客層の関心を高めるために、生徒がこれまで取り組んできた活動を冊子「SDGs × KOKA」にまとめ、同プラザ入り口で展示・配布するほか、手作りのポスターやPOP、デジタルサイネージなども掲示。実際にプラザを訪れた人が、SDGsに興味を持ったようだと聞き、生徒たちは活動の意義を実感した。
田中教頭は「校外での活動は、自治体や企業と関わり、社会の仕組みを学ぶ貴重な機会です。予算や法律の問題などで、現実を動かすことが難しいこともありますが、それも学びです。生徒たちは社会で働く大人と一人の人間として関わり、刺激を受け、進路について考察を深めることにもつながっています。何より素晴らしいのは、自主的な活動が単年で終わらず、先輩から引き継いで、年々発展していることだと思います」と笑顔で語る。今日も晃華の生徒たちは、活動に、学業に、真摯に取り組んでいる。