「志」を合言葉に、主体的な学びや他者への貢献を引き出す環境づくりに力を入れる足立学園。中学で立てた「志」を発展させ、将来や進路を明確にする流れをつくっている。2年前に志入試も創設し、多様な生徒の「志」の受け皿を広げている。
井上 実 校長
「質実剛健 有為敢闘」の校訓に基づき、「志共育(こころざしきょういく)」と呼ぶ独自の実践を続けている。中学入学時、社会にどう貢献したいのか、生徒がそれぞれの「志」を立て、キャリア系の学習や行事、教員との関わりなどを通じ、使命感や主体性を育んでいく。4年前に高校に新設された「探究コース」との相乗効果も高い。「探究総合」の授業で生徒自身で選んだテーマを掘り下げ、論文にまとめて発表する。多種多様な題材を自主的に学ぶ中で、さらに明確になった志から、将来の夢や進学につながっていく。
その一人が、この春卒業した八幡昂樹君だ。自動運転車の動画を見たのをきっかけに、自動運転のラジコンカーを制作し「第3回 Change Maker Awards」で金賞を受賞。コンピューターサイエンスの分野でトップクラスの米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校への進学が決まった。
他にも、藻類の探究から宇宙での植物栽培に目が向き、宇宙開発を学ぶ大学の学部に進学した生徒など、探究を機に進路が鮮明になり、AO入試や総合型選抜などで国公立大、難関大に進学する例は、枚挙にいとまがない。
「本校の掲げる志から探究への意欲が生まれ、進路選びにつながるという道筋ができつつあります。自分の目標がしっかりとかなう大学を目指すよう生徒たちには伝えていますが、志が明確な分、進路選択への生徒の真剣度も増しています」と、井上実校長は語る。
自主性を育む取り組みは、校内行事にも広がる。今年3月に実施した修学旅行では、教員の関与を極力減らし、現地の下見から旅行代理店との交渉、行動計画表作りまで、旅行委員の生徒たちが自ら取り組んだ。
「行事を通じて社会とつながる経験を積むと同時に、修学旅行も自分たちのための旅行なのだと意識してほしい、と任せてみました」と井上校長。
旅行期間中も、注意事項や訪問先の情報などをタブレットで参加者に周知したり、レクリエーションを企画したりと、ほぼ生徒たちで進めたという。
「任せられた生徒が試行錯誤しながらもやり切ることで、参加者からは感謝され、自他貢献感を得て大きな成長につながります。修学旅行後、やり切った表情で戻ってきた生徒たちを見て改めてそう思いました」(井上校長)
「志入試」で、人間力の高い生徒の受け皿に
「志共育」の一環で、2020年度から独自の「志入試」も始まっている。算・国の2科目試験の他、志望動機や将来の夢や入学後の抱負などを生徒がまとめた「エントリーシート」の内容と親子面接で、受験生の志を見るというものだ。「個性的で優秀な生徒が入っています」と井上校長。一連の学校改革で、同校が掲げる「志」の理念は、入試から授業、進路まで、色濃く反映されるようになった。