日本人による初めての私立女子校として1875年、跡見花蹊(かけい)によって開校した跡見学園。日本画家・書家でもあった学祖の教えを受け継ぎ、「常に自分らしくしなやかに生きる女性」として歩んでいけるよう、恵まれた環境の中で学力と人間力の育成に当たっている。
松井真佐美 校長
跡見学園の一日は、「ごきげんよう」から始まる。150年近く続けられてきた伝統が誇る挨拶だ。
自身も卒業生である松井真佐美校長は「女性教育のパイオニアであり、芸術家でもあった学祖の精神を受け継いで、『跡見流リベラルアーツ』と『時代のニーズを取り入れた先進の教育』を柱として、自分の生き方を前向きにセルフプロデュースできる女性の育成を目指しています」と、使命を語る。
跡見流リベラルアーツは同校の教育の土台となるものだ。身だしなみや立ち居振る舞い、礼節を身に付け、跡見流書道や茶道などの伝統文化を学ぶことで、基本の「型」を体得する。その上で「型」を破り、自分らしく生きるための力を養っていく。
その力として特に芸術教育を重視するのは学祖以来の伝統だ。「目と手と心」を働かせることで、自らの美意識を育んでいく。中学の美術では全員が美術分野と工芸分野を学ぶ。美術室には、陶芸窯まである。「本物」によって「本物の美を探求する」学びは常に大切にされており、例えばホールを貸し切りにして、世界で活躍中のアーティストを招いて芸術鑑賞会が行われたり、「放課後プログラム」では筝(そう)曲の家元からマンツーマンで指導を受けられたりする。「本物に触れることで、生徒たちは感性を磨き、芯となる価値観を形作っていくのです」(松井校長)。
また、新しい学びである「探究型創造学習」では、生徒たちの意欲や可能性を後押しするICT環境の下、地球規模の課題について考え、表現し、実行していく機会を多く設けている。
「自分で選ぶ」ことを通して
ブレない軸をつくる
進学の先にあるキャリアを考える進路指導にも力を入れている。高1スタート直後のオリエンテーションでは、「職業調べ」を基にポスターを作成し、セッションを実施。卒業生を招き、在校時代の過ごし方やどうキャリアを作ってきたかを語ってもらう。「本校の卒業生に人事担当者も多いと聞いています」と松井校長。バックオフィスの要となる人事部は、気配りが要求される部署だ。「周りを幸せにする女性」の育成をうたう同校ならではの特色かもしれない。また、上級生が下級生の面倒を見る“あねいもと”の校風も創立以来の伝統だ。卒業生は社会に出ても在校生の“あね”であり、進路の良き指針である。松井校長もその“あね”の一人。SEとして企業勤務の経験があり育児と仕事をこなしてきた。
「本校にはさまざまな分野で腰を据えて働いている人が多数います。女性には人生の局面で選択しなければならない場面が多くあり、そのときに、ブレない軸が必要なのです。本校で心の糧となる豊かな教養と、『自分で選ぶ』ことを学び、自分なりの軸をつくって、しなやかで凜とした女性に育ってほしいと願っています」(松井校長)