左から、SAPジャパン 小林 稔氏、オープンテキスト 市野郷 学氏、アビームコンサルティング 川口 健太郎氏

日本企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)の取り組みが活発化している。しかし、DXで実質的な成果を上げられている企業はまだ少ないのが現状だ。その要因はどこにあるのか。どうすればDXで成果を上げることができるのか。企業のDX推進を支援するオープンテキスト、SAPジャパン、アビームコンサルティングのキーパーソンが、それらの問いにずばり答える。

DXで成果が上がらない企業の共通課題は、データのサイロ化

── DXの取り組みが活発化する中、日本企業の間からは「DXの効果がなかなか出ない」「うまくいかない」といった声も聞かれています。そのような課題を抱える企業のどこに問題があるのでしょうか。

オープンテキスト・市野郷学氏(以下、市野郷) DXとは、デジタル技術とデータをビジネス、業務の変革に生かしていく取り組みです。その取り組みがなかなか前に進まないとすれば、その要因は、ビジネス活動を通じて日々生まれ、蓄積されていく情報(データ)を一元的に管理し、必要なときに必要なデータに即座にアクセスし、活用できる環境が整えられていないことにあるのではないでしょうか。つまり、業務に必要なデータが各所に分散してサイロ化しており、その管理、活用に多くの手間がかかることに問題の根源があるということです。

── なぜ、そのような状況に陥ってしまうのでしょうか。

SAPジャパン・小林稔氏(以下、小林) 最大の要因は、日本企業における業務のシステム化、ないしはデジタル化が、業務ごと、部門ごとの要求に従った“部分最適”の発想の下で進められてきたことです。それが結果として、システムとデータの分断を生み、業務プロセスを横断したデータの管理や活用を難しくしてきたといえます。

 また、企業の事業は、複数の異なる業務の連携によって支えられており、業務プロセスをまたいだデータのリアルタイムな連携がスムーズに手間なく行えること、あるいは、データ連携が自動化されていることも効率化には不可欠です。ところが、システムが分断されていると、そうしたデータ連携にも手間取るのが通常で、それもDX推進の阻害要因と見るべきです。

アビームコンサルティング・川口健太郎氏(以下、川口) 私は財務・経理部門の業務改革を支援するコンサルティング業務に携わっていますが、DXにおいて財務・経理部門には、彼らのこれまでの計数を扱う経験・知識を活用して、自社のビジネスに関わるあらゆるデータを分析し提言する、言わば経営の戦略遂行を補佐する「参謀」として機能することが求められています。

 それができない理由はシンプルで、財務・経理の担当者が、日々の業務に忙殺されているためです。そのため、市野郷さんや小林さんの言う社内データの一元管理が実現されることは重要ですし、ペーパーレス化によって紙と押印を前提としたアナログなプロセスを一掃することも非常に大切です。このように言うと財務・経理部門だけの業務改革の話のように聞こえるかもしれませんが、実は違います。紙と押印のプロセスの一掃はほぼ全ての部門に関わる取り組みであり、それによって大きな業務効率化の効果が得られるのです。

 実は、データの管理と活用をうまくできない企業には、根源的な要因がある。次ページではその要因を明らかにしつつ、3人が課題解決に必要な施策を具体的に提示する。