事業承継とは
株式の承継である
例えば子どもが複数いる場合はどうだろう。親にとっては家業を継がない子どももかわいい。そこで均等に株を相続させて、みんなで仲よくやってほしいと願う。だがこの親心がトラブルを招いてしまうという。
「子どもが似たような比率で株式を持っていれば、きょうだいげんかが始まり、会社を混乱に陥れます。平等に扱いたいという親の優しさが、かえって子どもたちを傷つける。会社を円滑に経営するには、誰か一人に強力な権限を持たせなければなりません。経営に民主主義はあり得ず、独裁が正解なのです」
故に株式はすべて後継社長が独り占めにし、残りの財産を他のきょうだいで山分けするという方法が正しい。そもそも“事業承継とは株式承継”であるという認識を持つ人が少ないと小山社長は指摘する。
事業承継とは、社長の椅子を譲ることではなく、会社法にのっとり株式を後継社長に承継させることに他ならない。その場合、株主の支配権を行使できるよう、自社株の3分の2、67%以上持つことが必要だという。
「事業承継には、会社法、税法、民法という三つの法律が関係しますが、最も重要なのは会社法(図)。株式を後継社長にまとめて渡した上で、税金対策を行い、最後に家族の相続問題を考える。会社の支配権を持たない社長は実力を発揮できない。なので、この順序以外に正解はない」
持ち株会社の
活用が有効
ちなみに小山社長自身の事業承継は、持ち株会社を設立し、社長個人ではなく法人として会社の株を持つことで、株式承継をスムーズに行う仕掛けを施しているという。
「人には必ず寿命がありますが、会社はずっと生き続ける。つまり社長が亡くなっても、持ち株会社が本体の株式を保有していれば、本体の株式の相続は発生しないのです」
最後に小山社長は、「事業承継で発生するもめ事の多くは、先代が事前に対策しておけば未然に防げる」と強調する。同社が行っている「事業承継セミナー」では、「継いだら、1年は新しいことはしてはいけない」「退職金は目いっぱいもらい、自社株の評価を下げろ」など、一見セオリーの逆を行くように見える論理が展開される。だが、「私が話す事例は、すべて実際の事業承継で成功してきたことばかり」という。
100社あれば100通りのやり方があるという事業承継の現場。実務経験に裏付けられた小山社長のアドバイスは力強い。