マウス実験と同じチタンシートを
張りめぐらせた部屋で寝てみる

 プレ研究に続く本研究として行われたのが、ヒトを対象とする「アクアチタンとストレス」の実験だ。マウスと同じチタンシートを化粧版に張りつけた部屋を用意、床マットにはチタン含有のラバーシート、さらにシーツもアクアチタンを含浸させた綿100%のものを用意した。

 こちらを本物の部屋とすると、もう一方の部屋はまったく同じに見えながら、アクアチタンを一切含まない素材で作られた。本物か偽物か、わからない状態で実験を進め、結果を比較するわけだ(二重盲検法)。

実験結果を発表する吉川敏一教授(京都府立医科大学学長、アクアメタル研究会代表)。2013年1月、京都府立医科大学青蓮会館にて。

 集められた被験者は、40歳から65歳までの男性24人。BMI(肥満指数)19.0~30.0未満というから、やや肥満気味の集団。さらに、「心理学的・生理学的ストレスを自覚し、かつ不眠(睡眠障害)を訴えている者」である。「正規被雇用者」「肉体労働者を除外した内勤者」「家庭保有者」という顔ぶれだ。

 要は、働き盛りのオフィスワーカーで、ストレスからくる不眠に陥っている男性。周囲を見回せば、日本のオフィスには、数多くいるタイプである。ただし、治療が必要な病気にかかっている人や、医師が不適と判断した人は除外された。こうして、実験の条件は整えられていった。

 いよいよ実験開始。被験者は、2グループに分けられ、日中はそれぞれ通常通り仕事に行って、夕方には指定された部屋に入り、5晩寝泊りした。その上で、主観的ストレス度(問診)、血中ストレスホルモン濃度、自律神経活動レベルを測定し、リラックス効果を検証していった。

ヒトでの効果は認められたが
「なぜ」の解明はこれからの課題

血中ストレスホルモン濃度の変化を表したグラフ。チタンを使用していない対照室群(白い○)では試験1日目=入室前と比較して、試験6日目で有意に上昇。一方、チタンを使用した被験室群(黒い●)では上昇は見られなかった。

 実験結果を見ると、主観的ストレス度、血中ストレスホルモン濃度、副交感神経活動レベルともに、チタンルーム(本物)で寝たグループは、有意のリラックス効果が認められている。

 見知らぬ中年のオフィスワーカーが、12人1部屋の合宿状態で5泊もすること自体、通常は考えられず、被験者がかなり「高いストレス」下にあったことは、想像に難くない。そんな中で、「自分は本物の部屋にいるのか、偽物の部屋にいるのか」がわからないまま、本物グループのリラックス度が日に日に向上していったのだから、アクアチタンとストレス解消に関係性があることは確実と見ていいだろう。

「被験者は、アクアチタンを飲んだり、食べたり、注射をしてはいない。チタンが含まれる素材に直接、体が触れない状態で、リラックス効果が観察されたわけであり、チタンから“何らかの影響”が生じていることが考えられる。先に行った動物実験では、チタンシートとカゴの間に鉛を入れたところ、リラックス効果がなくなった。“何らかの影響”を生じさせているものは、空間を通して影響を及ぼしているようだ。それが何かは、これからの研究になる」(吉川教授)

 ヒトを対象としてアクアチタンの臨床研究を行ったこと自体、初めてであり、今回有意の結果が出たことは、続く研究の引き金になっていくはずだ。ファイテンではこの検証を受け、アクアチタンの効果を生活空間に生かす「ファイテンルーム」の事業を始動させている。