グローバル市場での競争力を強化する目的の下、人財を企業の成長・発展のための「資本」と捉え、社員一人一人の潜在能力を最大限に引き出し、活用を図る「人的資本経営」に取り組む日本企業が増えている。グローバル製造業大手の横河電機もその一社だ。同社では、グローバルの人財・組織の能力を最大限に引き上げるべく、2023年度からマネジャーの人事制度をグローバルで順次変更し、人事プロセス、システムを一新していく。背景には、グローバル企業ならではの難題があった。

デジタルによる価値創造の競争で勝ち残るために

 今やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進は企業がグローバルな競争を生き残る前提条件であり、それを推進するための人財育成と組織体制の整備は企業の喫緊の課題となっている。グローバルに展開する顧客企業や現地企業のニーズに的確かつ迅速に応えるためには、地域ごとではなくグローバルで社内の人財を把握し、顧客の課題解決に最も適した人財を配置する「適所適材」が重要となる。

 プラントなどの制御事業を柱に世界61カ国に拠点を展開し、グループ全体で1万7000人を超える従業員を擁する横河電機では、グローバル経営のスタイルとして、地域ごとの顧客ニーズに現地の人財・組織が的確に対応するという「地域最適型」の事業展開を長く続けてきた。それは同社の強みだったが、一方で人事制度・プロセスやシステムが地域ごとに細分化し、グローバルな人財活用が困難になっていた。

 そこで同社が採用したのが、米ワークデイのクラウド型人事管理システム「Workday ヒューマン キャピタル マネジメント (HCM)」だ。同社が目指すグローバル人事戦略とは何か。Workday HCMを活用して、どのように人事制度・プロセスを変革しようとしているのか。

 次ページからは、ワークデイ日本法人社長の正井拓己氏が、横河電機執行役員人財総務本部長の松井幹雄氏に、Workday HCM採用の背景にある課題と同社の事業戦略・人事戦略について聞く。