久しぶりに、資産運用を取り巻く環境が好転してきた。債務危機を払拭しきれない欧州を除けば、世界的に景気の回復傾向がうかがえる。それに先駆けて株式市場の上昇も顕著になってきた。周知のとおり、際立って急伸しているのが日本株だ。

ファイナンシャルリサーチ代表
深野康彦氏

AFP、1級ファイナンシャル・プランニング技能士。クレジット会社勤務を経て、1989年に独立系FP会社に入社。96年1月に独立し、有限会社ファイナンシャルリサーチ代表に。マネー誌をはじめとするマスコミでもお馴染みの存在。

「いわゆるアベノミクスで日本株は絶好調ですが、今後も景気は緩やかに回復し、日米欧の金融緩和もまだ続くので、現在のすう勢に変化はないでしょう」

 こう語るのは、ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏だ。さらに彼はこう言及する。

「安倍政権が本当に脱デフレを追求するなら、十数年ぶりに資産運用の大転換期が訪れそうです。今までは特に運用しなかった人が結果的に勝ち組で、株式などに投資していた人が負け組となりがちでした。しかし、これからは積極運用する人が勝ち組となる局面を迎えるかも⁉」

 デフレが退治されて物価上昇が顕在化すれば、それに伴い現金の価値は低下する。一方で、株式や不動産などの資産価値が上昇する可能性も高まってくる。 

国際分散投資の基本を
忠実に実践しておこう

「円安が進んだことも株高に結び付いていますが、シェールガス革命でエネルギーがドルの価値の裏付けとなる可能性が高く、そうなるとドル安・円高が進みにくくなります」(深野氏)

 シェールガスの台頭で数年後には米国が世界最大の天然ガス産出国になるともいわれるが、こうした変化が為替相場にも影響を及ぼし得るわけだ。ここまで読んで前向きに投資を検討し始めた読者も少なくないだろうが、深野氏はこうクギを刺す。

「確かに目先は日本株に妙味がありそうですが、それ一辺倒は考えもの。基本となるポートフォリオでしっかりと国際分散投資を実践した上で、プラスアルファとして日本株で積極的に利益を追求するのが理想です」

 最も基本的な国際分散とは、内外の株式と債券に4分の1ずつ資金を投じるというもの。そして海外株式については、先進国と新興国に7:3程度の比率で分けるのが従来の定石だった。

 「しかし、今後の成長性を踏まえれば、やはり新興国が焦点になるので、先進国との比率を逆転させてもいいぐらいです。新興国の中でも日本人に身近なアジア諸国は、豊富な人口を抱えて経済成長が著しく、所得の伸びも凄まじい。アジアの株式市場には、至る所にお宝が埋もれていそうです」(深野氏)

 深野氏いわく、ダイナミックにリターンを追求するなら、アジア市場の個別銘柄にフォーカスするのが最善で、皆目見当がつかないなら指数連動型の投資信託を選ぶ手もあるという。要は、個々の事情やニーズに応じてチョイスすればいいのだ。