1875年に創設された女子教育のパイオニア。「自律し自立した女性を育てる」という創立者で先覚的な女性だった跡見花蹊(かけい)の教えは、現在の同校が掲げる「しなやかで凜(りん)とした女性の育成」へと継承されている。
松井真佐美校長
出身者には、女子教育の伝統校としての気品と現代女性としての知性や開拓精神を併せ持つ女性が多い跡見学園。
中高を跡見学園で過ごし、大学では応用数学を専攻してプログラミングや統計学を学んだ松井真佐美校長。SEとして一般企業へ入り、その後数学教員として母校に転職。仕事と子育てを両立させて2018年に校長に就任した。そして今、理系の見識を生かしながら改革にまい進している。
例えば「統計グラフコンクール」では、自分の興味を「見える化」することを体験させる。
「スーパーでいつも売り切れの商品は、いつ、どんな時間帯に売れているのか。そんな疑問を持って実際に調査しグラフ化すると、『人の流れ』が明確に見えてきます。もやもやとしていたことが誰の目にもくっきりと見えてくるのが数学や統計学の魅力です」
22年度、中学に導入したフォーサイトの手帳には、生徒が自分の学習スケジュールと振り返りを書き込んでいる。これも、統計グラフと同じく、自分の生活を「見える化」することによって「気付き」を与えることを目標としている。23年の春休みには東京農大生命科学部と連携して乳酸菌の実験を行った。「中2~高2の希望者を募ったところ、30人ほどが参加しました。身近な乳酸菌飲料を幾つか使って乳酸菌を増やす実験で、皆、楽しそうに取り組んでいました」と松井校長。同校では学年の枠を超えて一緒に学ぶ機会が多い。それが、上級生が下級生の面倒を見る「あね・いもと」の伝統にもつながっている。
さまざまな体験から
ぶれない「軸」を構築
先輩後輩のつながりは、キャリア教育にも生かされる。「OGを招いてのパネルディスカッションには、後輩の役に立ちたいと、皆、忙しい合間を縫って駆け付けてくれます。直近では、中学生の頃の職業調べがきっかけで理系大学に進み、警視庁科学捜査研究所(科捜研)に入職したOGが来てくれました。しっかりとした『軸』を持つ彼女のような存在は、在校生のロールモデルになります」。松井校長は続ける。「『軸』とは、自分の中に、本物の体験に裏打ちされた知恵や知識、教養の引き出しを多く持つことで得られると考えています」。5教科の学びはもちろん、それ以外の跡見流リベラルアーツ、伝統文化系の放課後プログラム、クラブ活動など、跡見の教育の一つ一つが本物の体験だ。
「私が応用数学を選んだのは、世の中に数字を使わない場所はないからです。それが私の美意識であり『軸』です」と松井校長。女性は就職してからも結婚、出産などさまざまなシーンでどう進路を取るか選択を迫られる。そのときに自分の中に確かな「軸」があれば、凜としてしなやかに人生を歩んでいけるはずだ。