授業や行事などで「気づきの教育」を実践している淑徳巣鴨中学高等学校。生徒に自分が持つ潜在的能力に気づかせ、主体性を引き出し、人間的成長を促す。手厚い学習サポートもしており、進学実績も伸びている。
矢島勝広校長
創立者・長谷川良信(りょうしん)が掲げた理念「感恩(かんのん)奉仕」の下、感謝の心を持って能力を社会に役立てられる教育を大切にしている。その中心が、生徒が持つ潜在的能力に気づかせる「気づきの教育」。それにより主体性を育み、人間的な成長を目指す。
2023年春に就任した矢島勝広新校長は「前校長が提唱した気づきの教育を受け継ぎ、変化を続ける世の中で生き抜ける人材を育てたい」と抱負を語る。
同校は気づきを促すさまざまな工夫をしている。探究型の学びとして、中1では自分を見つめ直し印象的な出来事をつづる「自分史ワーク」。中2では周囲に目を向け、友人や教員、施設など学校の良いところを動画で紹介する「ムービーワーク」。さらに中3では自ら決めたテーマを研究して「卒業論文」を発表する。高校では「課題研究」を行い、高2では個人研究の結果をポスター発表する。
グローバル教育でも、多様な文化、価値観に気づかせることを狙う。中2ではネイティブスピーカーと3日間過ごす「イングリッシュキャンプ」、中3の米国修学旅行、高2の英国修学旅行ではホームステイしながら現地校と交流する。22年度からは日本にいる外国人留学生を100人近く招き、3日間交流して学ぶ「グローバル耕心プログラム」(高1)も始めた。矢島校長は「エチオピアやフィリピンなど英語を母国語としない国の留学生も来て、自国の紹介や日本に対する見方を聞くことができます。少し英語で話すハードルが下がり、同時に世界を見る視野が広がります」と説明する。
自分の長所に気づき
次につながる自信を持つ
また15年ほど前から生徒を積極的に褒める教育を行っている。例えば「ベストスチューデント」や「希望の星」は、生徒の勉強面以外の長所を見つけて表彰するものだ。校舎の壁に生徒の笑顔の写真と担任の丁寧なコメントを入れた表彰状を掲示。周囲から評価されることで自分の長所に気づき、自信を付けて次のチャレンジにつながることを目指している。これはかつて矢島校長が米国の学校で見た事例を参考に始めたという。その他、自学自習を個別に支援する「SSEDプログラム」では、自習室の利用時間を延長し、教員やチューターが常駐。AI教材を使った自習もできる。進路決定には学年担任らのチームで対応し、蓄積したデータを基に一人一人に最適な計画を立てる体制もある。
こうした対策が功を奏し、23年春には、国公立15人、早慶上理69人、GMARCH245人と、合計で過去最高の329人の合格者を出した。例年より卒業生数が約70人少なかったにもかかわらず、だ。「受験はチーム戦。放課後指導を充実させ、進路指導には教員が知識や情報を結集して当たっています」。新校長の下“淑巣”はさらなる飛躍を目指している。