建学の精神「順天求合」(自然の摂理にしたがって真理を探究する)を受け継ぎ、グローバル時代に英知と人間性で世界に貢献できるよう、進学教育、国際教育、福祉教育を柱に、中学から探究メソッドで学ぶ。
片倉 敦副校長
順天中学校・高等学校の教育方針は、「学び方を大切にして、真の学力を育む」「生き方を大切にして、真の人間性を育む」の二つ。未知の問題の解決策を見いだす思考力や創造的学力を育み、他者と協働して集団をまとめ、集団に貢献する人格と行動力のある人材の育成を目指す。
「何のために探究をやるのかと問われたら、『世界に貢献し、世界の未来を創るため』と答えます。本校にはそれを実行している生徒が大勢います」と片倉敦副校長は胸を張る。
例えば、文部科学省主催の高校生を対象とした留学支援「トビタテ!留学JAPAN」に、2019年に参加した小川紗慧さん。2カ月間カンボジアに留学し、得意な英語を生かして現地の村の子どもたちに歌やジェスチャーを使って英語を教えた。彼女には、子どもたちが英語を覚えればキャリアにつながるという信念があり、帰国してからもZoomでカンボジア教育支援を継続。現在も後輩に引き継がれ、在校生たちが活動を続けている。
教室を飛び出して
世界の未来を創る
同校で22年度からスタートした起業家視点の「探究コンテスト」では、生理用品不足に悩むザンビアの女学生たちが自由に活動することができるようにする、ガールズアッププロジェクトのグループが優勝した。その内容は、現地の支援グループからヒアリングし、現地で不足している材料の一つ、スナップボタンを送付することを選択した。
「本校最寄りのJR王子駅の協力を得て、約1カ月間駅構内に回収ボックスを設置させてもらったところ、2475個のスナップボタンが集まり、現地に送ることができたのです」と、片倉副校長は生徒の頑張りをたたえる。生徒たちはその後もスナップボタンを使わずに済む布ナプキンの作り方を考案・製作し、その方法を現地の支援グループと共有するなど、より持続的な支援策でプランをブラッシュアップさせ、外部審査員をうならせた。
最後に同校のOB、宮地貴士さんを紹介しよう。彼は東日本大震災で「国境なき医師団」の活動を見たのをきっかけに医師を志し、秋田大学医学部に進学。在学中の17年に、ザンビアに診療所を建設する「ザンビア・ブリッジ企画」をスタートさせた。ザンビア風お好み焼きで自ら建設資金をつくったり、現地住民と交流して出資や建設に参加してもらう活動をしたりしながら、22年2月に診療所を完成させ、9500人の住民に医療を届けた。医師として秋田県内の総合病院に勤務している今も、ザンビアとの交流を続けている。
「本校の生徒たちには彼のように、世界の未来を創る日本人を目指してほしい」と片倉副校長。順天で育った子どもたちは、志高く世界へ羽ばたく。