個々が持つ才能を伸ばす「天分の伸長」を理念に掲げる城西大学附属城西中学・高等学校。修学旅行先での提案が商品化され、オーストラリア研修も再開した。さらに米国進学への道も用意するなど改革を続ける。
神杉旨宣校長
1918(大正7)年創立の城西大学附属城西中学・高等学校は建学の精神として三つの理念を掲げている。一人一人生まれ持った才能を引き出し伸ばす「天分の伸長」、互いを尊重し合い思いやりの心を育てる「個性の尊重」、主体的な行動力と社会変化に対応できる力を育む「自発活動の尊重」だ。
この理念の実現を目指すのが、独自の中高一貫教育プログラム「JOSAI Future Global Leader Program(JFGLP)」だ。体験重視の教科横断型の教育で、知識とともに問題解決能力や実践力を身に付けることを目標にする。稲作や日本文化の体験、模擬裁判などを通じて知識との融合を図り、比較文化研究にも積極的に取り組む。
その中学3年間のまとめとしてオーストラリア海外研修がある。コロナ禍のため中止していたが、2023年2月に再開した。2週間のホームステイ、現地校での語学研修を通じて、身をもって異文化に触れ、コミュニケーションを図る。「五感を駆使して相手の意思を理解し、心を開いて一生懸命伝えることで、自分の英語力でも通じると実感できる。自分以外に頼れる人のいない環境の中でやり切ることで、生徒たちの自信や自己肯定感が確実に高まります」と話すのは神杉旨宣(むねのり)校長だ。
探究型のキャリア教育「αゼミ」(希望者制)では、高2の修学旅行で訪れた岡山県高梁(たかはし)市吹屋の地方活性化への取り組みとして、唐辛子成分を入れた入浴剤を提案。これは赤色の顔料「ベンガラ」の生産でかつて栄えた同市をイメージしたもので、土産品として商品化が実現した。「こうした経験から、『地域社会を支えたい』と地方公務員やアナウンサーを志望して大学に進学した生徒もいます。自分の将来像を描けた子は、どの大学を選ぶかもすぐ決まり、総合型選抜で合格しました」(神杉校長)。
城西と米国の高卒資格を
取得できる仕組み
同校では、中3生・高1生を対象に、22年から「USデュアルディプロマ」を導入している。これは在校中、放課後などにオンライン講座を受講することで、城西附属に通いながら、米国の名門高校の卒業資格も得られるというプログラム。全米の上位5%に入る18大学への指定校推薦入学や、国内の難関大学を帰国生枠で受験することができることから、進学の選択肢が大きく広がることになる。
また、23年度から高校の普通クラスを、アカデミック&クリエイティブ(AC)クラスに変更し、一般選抜を受ける生徒と総合型選抜を受ける生徒のそれぞれに合った放課後指導、サポートを用意している。
今春の大学入試では、GMARCHに前年の1.5倍に当たる受験生が合格するなど、系列外への進学実績も大幅に向上した。個々の才能を伸ばす試みが花開き、着実に実を結んでいる。