大正自由教育の拠点校として創設された成城学園。「個性尊重の教育」の伝統は今も息づき、生徒一人一人が輝ける学校を目指す。情操教育に加え、国際感覚を養う教育には定評がある。
成城学園は1917(大正6)年、大正自由教育の拠点として澤柳政太郎により設立された。緑豊かな世田谷のキャンパスに幼稚園から大学院までがそろう今も、当時の「自学自習」「自治自律」の精神が息づき、生徒の個性を尊重し、それぞれが持つ力を最大限に発揮させることを大切にしている。
朝の登校時には、生徒会の委員が校舎入り口に立ち、ハイタッチして生徒を迎え入れる姿が見られる。「自分たちで何かできないか考え、始めたことです。100年以上大切にしてきた自治自律の考えが根付き、みんなが輝いています。一人一人が輝けるように個性を尊重するのが成城学園の伝統なのです」と中村雅浩校長は説明する。
教育の柱に情操教育を掲げる。代表的なものが、中1の「海の学校」と中2の「山の学校」だ。海の学校ではライフセービング実習を通じて命の教育を行い、山の学校では体力に応じ3コースに分かれて本格的な北アルプス登山をする。コロナ禍で中止していたが、いずれも2022年に復活した。高校では修学旅行に代わる「課外教室」を約20コース用意しており、興味に応じて自由に参加できる。
情操教育は行事にも生きている。その最たるものが体育祭の「飛翔祭」。中高の生徒全員が参加し、高3を中心に生徒が企画、運営する。「高3は受験勉強もある中、長時間かけて準備し、6学年をまとめ上げる。とても大きな経験で、達成感も大きく、涙を流す生徒もいます。6年間で力を付けたなと、見ていてこちらもうれしくなります」と中村校長はほほ笑む。
世界に目を向ける授業
探究型の新科目も開始
もう一つの柱は独自の英語教育だ。英国のオックスフォード大学出版局など外国の教科書やeラーニング教材などを使い、「聞く・話す・読む・書く」の4技能と国際感覚の習得を目指す。英検など資格取得も推奨しており、帰国生でなくても英検1級を取る生徒も出ている。
21年度からは外国人留学生と交流して自己啓発を図るエンパワーメントプログラムを導入し、22年度には外国人講師らのチームティーチングで世界へ目を向ける積極性を育てるグローバルコンピテンスプログラムも開始。英語を学ぶだけでなく、英語を使って学び、国際理解を深めることを目指す。
さらに23年度には、従来の教科をまたぐ探究型の新科目「ゼミナール」を始めた。高2が対象で、今後高3にも拡大する予定だ。教員や大学生が指導役に就き、生徒個々人がテーマを見つけ、自ら研究し内容を深めていく。「将来のキャリアにつながるもの、卒業研究的なものになるかもしれません。こちらの想定を超える自由な発想が出てくることを楽しみにしています」と中村校長。ここでも個性尊重の精神が生かされそうだ。