「自ら学び心ゆたかにたくましく」を教育目標に、志を持ち、自ら将来を切り拓いていける全人教育を実施。その一環であるグローバルプログラムに、2022年、アフリカが加わった。
井上 実校長
足立学園中学校・高等学校の井上実校長が日頃から生徒に伝えている言葉は「志なき者に成功なし」。志は「ゆめ」と読む。自分本位の個人の幸せではなく、世のため人のために自分の人生を使い切る覚悟を持った「ゆめ」=「志(こころざし)」を持てという生徒たちへの熱い檄(げき)なのだ。
同校の教育も行事も部活動も、体験すること全てが10代の男子が自ら「志」を立てるための材料となる。中でもグローバルプログラムは、親元から離れ、異なる人種、異なる言葉、異なる文化の中に身を置くという非日常の体験が、生徒の成長を促す絶好の機会だ。コロナ禍で2年間実施できなかったが2022年度から再開され、12月には、同校初となるアフリカ東部のタンザニアでの「アフリカスタディーツアー」も実施された。
「ご縁があって、アフリカ渡航を170回以上経験しているフリージャーナリスト・大津司郎さんにツアーガイドをお願いすることになり、安心して実施することができたのです」と井上校長は話す。
人間力を自然と
向上させる学校へ
9日間の日程で、中3が5人、高1が3人、高2が1人の計9人が参加した。メンバーには、親から「行かされた」生徒もいて、彼は成田空港の出発ロビーで終始うつむいていたという。
タンザニアに到着した一行は、ホテルに宿泊。ホテルは初日と最終日だけで、他の日程はキャンプ泊。朝市で現地女性にインタビューした生徒たちは、彼女が12歳で子どもを産んだと聞き、衝撃を受けた。その様子は日本の足立学園にライブ配信され、中2生と共有した。
キリマンジャロの麓の村で地元のNGOと植林を行った際には、国営放送の取材を受けた。現地校訪問では100人近い児童が集まり大歓迎。足立学園の生徒が、歌やダンスを披露すると、現地生徒も一緒に踊って楽しんだ。
世界遺産のセレンゲティ国立公園で多くの野生動物に出会う一方で、バナナ農園でのエコツアーやコーヒー農園での作業工程体験で、現地の産業や働く人に接する体験を重ねていく。
テントの到着が遅れ、設営ができていないというトラブルもあった。しかし、生徒も含めみんなで設営し、団結力も強まった。現地スタッフとの交流も深まり、最終日には皆でハグし合って別れを惜しんだ。
「出発ロビーでうつむいていた生徒は今年別企画の旅行委員長に立候補し、『この旅行を楽しむぞ!』とみんなの前で声を上げるまでになりました」と、井上校長は成長ぶりをたたえる。体験・経験の場を用意し、自然に人間力が向上していくシステムの構築を目指すのが学校の役割とする同校。「アフリカスタディーツアー」の参加者は、それぞれ志の芽を得たに違いない。