「神と人とを愛する人間。神と人とに愛される人間」を掲げる浦和ルーテル学院中学校・高等学校。少人数教育ときめ細かい指導で、生徒の才能や個性を引き出し、多彩な進路につなげている。
浦和ルーテル学院小・中・高等学校
福島宏政理事長・学校長
人は誰でも、才能や個性を神様から与えられています。私たちはこれを『賜物(たまもの)』、ギフトだと考えています。自分に与えられた賜物を、生徒が見つけ、人の幸せのために生かせることで自分も幸せになれる。そう考えています」。浦和ルーテル学院が教育方針に位置付ける「ギフト教育」について、福島宏政校長はこう説明する。ギフト教育は「才能」「共感」「世界貢献」「自己実現」の四つを通じ、人間的な成長につなげていくのだという。
自らの才能を意識させる取り組みの一つが、中学で取り組む「フィールドプログラム」だ。「アーツ」(歴史・芸術・文学)、「サイエンス」(科学)、「イングリッシュ」(英語)の三つの分野から一つを選び、掘り下げていく。「アーツ」で取り組んでいるのが世界遺産をテーマにした探究だ。グループワークで世界遺産の歴史的価値や魅力を探ったり、実際に世界遺産を訪問する計画を立てながら、生徒の興味で主体的に学んでいく。世界遺産検定にも挑戦し、高校生レベルの級に中学生の9割以上が合格。中には満点を取って、世界遺産アカデミーから特別表彰を受けた中1生もいる。「イングリッシュ」では、国際支援NGO「ワールド・ビジョン」の職員の講演を聞く場を設けた。
「英語を通じて社会を知り、英語を使ってどうしたら課題を解決できるかを考えることは、将来につながることだと考えています」(福島校長)
才能を生かす場を広げるために、国際教育にも力を入れている。ディベートやプレゼンテーションなど、実践型の授業で、世界で通用する表現力を磨く。米国研修は、今年度から再開し、国内でのイングリッシュキャンプも予定している。
マンツーマンで
進路を模索
1クラス25人という少人数教育は「普段の生活から将来のことまで、教員はさまざまな相談を受けていて、メンターのような存在です」と福島校長。
こうして積み重ねた信頼関係を基盤に、生徒の志望をしっかりと受け止め、個別化、最適化された指導がルーテル流だ。
高校に上がると年8回以上の個人面談を通じ、生徒と教員の二人三脚で進路を明確にしていく。ひとたび志望が固まると、教員が生徒ごとの学習プランを作成するなど、オーダーメード型の指導を徹底させている。
大学入試の受験科目の講習や授業は、受講する生徒がたとえ1人でも専任教員が担当し、音大や美大の志望者には、実技試験の対策も行う。
2018年に青山学院大学と系属校協定を結んで以来、入学時点で同大を志望する生徒も増えた。家庭的な雰囲気の中で、教員が生徒の才能や個性にじっくり向き合うギフト教育の思想は、多彩な進路先にも色濃く反映されている。