創立126周年を迎える女子伝統校。8年前から学校改革に着手し、独自の英語教育やPBL型授業、ICTの活用や新たなコース制を導入してきた。社会とつながることを大切にしながら、常に最先端の学びを模索している。
和洋九段の教育の特徴は、英語教育とPBL型授業、そして“Connected School”にある。英語教育に関しては、中学でグローバルクラスと本科クラスに分かれ、ネイティブスピーカーと日本人教員が丁寧な指導を行う。PBL型授業は、全教科で導入されているアクティブラーニングで、タブレット端末を自由自在に使いながら、深い学びを実践する。“Connected School”では、学校の外とのつながりを大切にして、社会貢献や企業訪問、地方創生やSDGsに取り組みながら、世界とつながり世界を知る体験をする。
高校からは目指す進路に合わせたコース制となるが、2022年度、初めて卒業生を送り出した。中込真校長は、その中でもサイエンスコースの理数探究の授業に手応えを感じている。高1で基礎知識や実験技能、ロジックや論文の書き方などを学び、高2でテーマを決めて“本当に知りたいこと”を探究する。
「単なる調べ学習に終わらないのが良い点だと思います。ある生徒は“ペットと飼い主の顔が似るのはなぜなのか”を探究。飼い主が自分に似たペットを選ぶのではないかという仮説を立て、海外の論文なども読み、アンケート調査も行いながら、自己肯定感がペットの選択に関係しているというレポートを書き上げました。別の生徒は、“チーズはなぜ伸びるのか?”を研究。メーカーにも問い合わせを行い、さまざまな材料をチーズに混ぜて実験を繰り返し、チーズが伸びる理由を探究しました。その生徒は酪農を学ぶため農学部へ進学しました。理数探究が、生徒の進路を決めるきっかけにもなったのです」
最先端のメタバースの
導入も検討
今後新たに取り組みたいと考えているのがメタバース(3次元の仮想空間)の活用だ。修学旅行や研修旅行を記録して、メタバースを使って後輩たちに臨場感を持って伝える。さらにメタバースを使った反転授業。基礎学力の向上を図るため、教室の授業をリアルに再現し、仮想空間にいる教員が質問に対応する。理科の実験や英会話なども、仮想空間に身を置くことで、テキストや動画だけでは難しい記憶の定着が期待できる。
「これからメタバースは、世の中で広く使われていくはず。最先端のツールに触れておくことで、活用するハードルも低くなる。生徒たちにはそういう機会も与えたい」(中込校長)
和洋の「和」に当たる伝統を重んじながらも、時代や社会の変化に合わせ、「洋」に当たる最先端の学びを積極的に取り入れていくのが同校の特徴だ。
薬学部、看護学部など医療系への進学も目立つが、学校推薦型選抜枠を活用しながらバランスよく志望校を目指す。生徒たちの「なりたい自分」をきめ細やかな指導で応援している。