「英語の山手」で知られる山手学院は、50年以上も前から海外に生徒を派遣し、受け入れも行っている。プログラミング的思考力や哲学的思考力も鍛えて、20年後に世界をリードする「Change Maker」の育成を目指す。
山手学院は「太平洋が再び荒れることのないように」「大地を1cmでも動かす働きをせよ」と考えた2人の創立者によって1966年に開校した。
強い意志を持ち、自立した人間を育てようと、創立から3年後に米国への生徒派遣を開始。現在も国際交流に熱心に取り組み、全生徒が参加する中3の「オーストラリアホームステイ」や、高2の「北米研修プログラム」などがある。北米の研修先は、教員らが現地でプレゼンテーションを繰り返して開拓しているという。
「海外への挑戦は、好奇心旺盛で、怖いもの知らずなうちにした方がいい」と話すのは、入試対策部長の渡辺大輝教諭。生徒は2週間の北米研修で現地の学校に通い、1年間かけて準備した日本文化の紹介やパフォーマンスを披露する。
渡辺教諭がカナダへ引率した際には、生徒が東日本大震災の復興支援ソング『花は咲く』を合唱したところ、震災から数年たっていたが、涙を流して聴いてくれる観客がいた。その姿を見た生徒たちは音楽が相手に響く瞬間を感じたという。
「多くの方が亡くなり、原発事故もあったので、デリケートに受け止められ過ぎたらどうしようという不安もありました。でも生徒の歌は、それを超えた理解を得られていました」と渡辺教諭。その後、カナダの生徒たちが開いてくれたダンスパーティーで、普段は斜に構えている生徒たちも達成感と興奮に包まれた姿ではじける様子を見て「教員ではつくり出せない経験をした。もっともっと私たちの想定を超えてほしい」と願ったという。日本に海外の生徒や教員を招く「リターン・ビジット」もある。これは相互理解や「おもてなし」の心を育むだけでなく、北米研修で語学力にもどかしさを感じた生徒たちが再挑戦する場にもなっている。「個々の成長のスピードは違うので、できるだけ多くの機会をつくりたい」と渡辺教諭は説明する。
同校のカリキュラムは中高の6年間を「基礎学力の向上」「応用力を付ける学習」「大学入試準備」の三つに分けている。英語は中学1年からネイティブスピーカーの授業が週2コマあり、英語に親しむと同時に実践的な英語を身に付ける。
非認知能力を伸ばす
独自のプログラムも導入
2019年度から学力テストでは測れない協調性や粘り強さなどの非認知能力を伸ばす「グローバル・リーダー・プログラム(GLP)」も新設した。教員自ら全国の特長的な学校を訪ねて、「SDGs」「アントレプレナーシップ」「プログラミング的思考力」「英語対話力」「哲学的思考力」の五つを将来に必要な能力として厳選、工夫を凝らした講座を開催している。総敷地面積6万平方メートルの緑豊かなキャンパスで、世界に信頼される国際人の育成に尽力している。