グローバルとSTEAMを軸に、クリエイティブな学びを実践する聖徳学園中学・高等学校。2024年4月、高校課程にデータサイエンスコースを新設する。データを読み解く力とリベラルアーツで、文理融合の学びを目指す。
ドゥラゴ英理花 データサイエンス部長
2024年度、高校課程に新設される「データサイエンスコース」は、大量のデータを読み解き、科学的根拠に基づいた仮説や知見を引き出す学びを深める。
「数学、情報、統計学の知識が下敷きになった学問ですが、多種多様なデータを扱うので、生活全般に関わる領域といえます」。データサイエンス部長のドゥラゴ英理花教諭は、この領域に特化したコースを創設する目的をそう語る。
「予測不能な社会では、データに基づいた判断が求められるようになり、自分の提案が科学的根拠に基づいたものなのかが問われてきます。一方、生徒の発表や提案を見ると、感覚や主観のみに頼ったものも少なくありません。データを駆使し、新しい価値を生み出す学びが不可欠になっています」
探究的な学びを重視するため、新コースの定員は25人程度に絞り込む。国際的な教育の標準プログラム「国際バカロレア」(IB)の教員資格を持ち、IB導入校の経験が豊富なドゥラゴ教諭が、リベラルアーツを重視するIBの手法を応用し、さまざまな科目にデータサイエンスを組み込んだ、文理横断のカリキュラムを構築する。また、一部の授業は英語で行い、最終学年では、生徒一人一人の興味・関心に基づいたゼミ形式のプロジェクトにも取り組むという。
「あらゆる角度から物事を分析する批判的思考と、その下支えとなる知識のバランスに配慮し、勉強だけでは身に付かないコミュニケーション能力や、共感する力といったコンピテンシー(資質・能力)も育みたいと考えています」(ドゥラゴ教諭)
学びに大きな改善を図る
データ重視のアプローチ
データサイエンスの視点は、すでに普段の授業に組み込んでいる。総合的な探究の時間の「グローバルサウス」に関する授業では、途上国の生活を、画像だけではなくデータで読み解くことで、自ら抱いていた途上国への思い込みに気付いたり、情報の授業で、「マグロの価格」の推移を分析し、価格が高い期間の社会的背景を探ったりした。授業にデータの視点を取り込むことの効果が、具体的に表れているという。「途上国の現状をデータで把握した授業の後、SDGsの探究学習の成果発表会が開かれたのですが、それまでの想像力や思い込みに頼った解決方法の提案ではなく、関連のデータを根拠にした解決方法を導き出した発表が相次ぎ、目に見えて効果があることを実感しました」(ドゥラゴ教諭)。
国際的な課題に、ツールを駆使して解決方法を探る学びで、21年に「Apple Distinguished School」に認定された同校。従来大事にしてきた創造性と、データに基づく多面的な思考が深く結び付くことで、新たな価値を生む素養を磨く場がすでに生まれている。