創立以来「全人教育」を教育理念に掲げ、人間力のある生徒の育成を目指している。社会課題の生の現場を知る自治体や企業の協力を得て、特別授業を行い「触れて、感じて、表現する」、五感を使った教育を実践している。
中西郭弘中学部長
61万平方メートルある広大なキャンパスに幼稚部から大学・大学院までがそろう玉川学園。1929(昭和4)年、小原國芳により「ゆめの学校」として創立された。教育理念に「全人教育」を掲げ、生徒たちは緑豊かな環境で伸び伸びと学んでいる。中学・高校では「深みのある大人」「丸みのある大人」の二つを目標としている。「触れて、感じて、表現する」ことを重視し、五感を使った多くの体験から、学習意欲や本当の意味での学力を向上させ、教養や品格など、教科だけでは得られない人間性を養い「深みのある大人」を育成する。さらに「玉川しぐさ」(気が利いて即行動し、社会全体のことを考え、相手に恥をかかせない行動をするなど、粋な立ち振る舞い)を通じて、「丸みのある大人」を育成する。
先進自治体の協力を得て
ごみ問題の特別授業
その一環として、2022年11月、京都府亀岡市の協力の下、中1で教科横断型の特別授業「『少し先の当たり前』を私たちの手で」を行った。亀岡市は「プラスチックごみゼロ宣言」を打ち出し、小売店でのプラスチック製レジ袋の提供を全国で初めて禁止した自治体。生徒たちはあらかじめ、約1カ月かけて「10年後にプラスチックごみを削減するため何ができるか」をテーマに、グループに分かれ、統計データなどを調べて検討し、発表。4クラスから各2グループの代表を選び、この日、亀岡市の担当部長の前で発表した。
雨の日は「MYボトル」ならぬ「MY傘袋」を持ち歩く、ペットボトルを「寒天」で作る、スーパーのフードパックを紙製にする……などさまざまな提案があり、プラスチック製ペンを金属ペンや新素材のペンに切り替えるという提案が優勝に選ばれた。
中西郭弘(かつひろ)中学部長は「昨年の企業に続いて、今年は行政にお願いして特別授業が実現できました。23年度は地元の町田市と共に、何かできればと考えています。授業以外の委員会活動などでも、地域連携、地域貢献ができるような活動を考えていきたいと思っています」と話す。
ホンモノに触れ、感じて、表現する教育は、伝統の「労作教育」や、探究型の学習「自由研究」、体験型学習の「玉川アドベンチャープログラム」などさまざまな場面で実践されている。コロナ禍で難しかった海外研修の派遣や受け入れも回復しており、国際感覚を磨く国際教育分野も健在だ。
中西部長は、今年度はキャリア教育にさらに力を入れたいと話す。「オンラインでお昼休みに卒業生に出てもらうことも可能になりました。玉川学園での自由研究がそのまま職業になった卒業生など、さまざまな職業の人にお話ししてもらい、職業観を培っていきたいと思います」。