1950年に創立されたミッションスクール。聖書に基づいた人格教育を実践している。他者との対話を大切にして、人の心に寄り添い、共に生きることを学ぶ。心のケアが必要な生徒には、チームで関わる支援体制がある。
安藤理恵子学院長
2023年2月、岩波ジュニア新書から『10代が考えるウクライナ戦争』という本が発売された。全国五つの高校の生徒たちが、ウクライナ問題について座談会を行った記録だ。玉川聖学院高等部もその1校として参加、7人の生徒の意見が収録されている。
「巻末でジャーナリストの池上彰さんが、本校生徒の発言を引用して、“高校で礼拝のときに、『ロシア兵のために祈りましょう』と先生に言われたと紹介してくれた生徒がいます。戦争は憎むが、戦争に動員されている兵士たちも、ある意味で被害者です”と言及してくれました。22年4月には、ウクライナの日本大使館で働いていた方の話をオンラインで聞く機会もあり、生徒たちはこの一年、激動する世界情勢や平和について、身近なこととして真剣に考えられるようになり、自分の意見を伝えられるまでに成長したと思います」
そう話すのは、安藤理恵子学院長だ。
玉川聖学院が大切にしているのは、自分の思いを表現すること。自分の心を表現するにはどんな言葉が適切か、相手は自分の言葉をどのように受け取るのか。毎日の終礼や授業、行事には「振り返り」という時間が組み込まれ、友人たちの表情や応答を受け取りながら、人とつながるための言葉を学習している。高校では「総合科・人間学」や「TAP(玉聖アクティブプログラム)」を実施。生きることの意味を考えながら、地球共生や人間社会、芸術・メディアなどについて、実践的・主体的な体験学習を行っている。
生徒の成長に寄り添い
チームで関わる支援体制
玉川聖学院には、生徒の成長に寄り添い心のケアを手厚く行う姿勢がある。2人の専任教員が常駐する保健室や臨床心理士2人が交代で常駐するカウンセリング室があり、週1回、学院長と校長、学年主任らを加えたミーティングが行われる。カウンセラーには守秘義務があるが、できる範囲内でケアを必要とする生徒の情報交換を行い、対策を考える。「進級が危ぶまれる生徒には丁寧な面接を繰り返し、その生徒にとって最善の進路を一緒に考えます。決して見放さず、事情を勘案しながら寄り添う姿勢が、この学校には伝統としてあります」(安藤学院長)。
受験に関しては、小論文対策や面接指導などの個別支援を、教員全員でバックアップする。また、350人以上の指定校枠があり、学校推薦型・総合型で進学する生徒は現役進学者の85%に及ぶ。安藤学院長が生徒に伝えたいのは、「生まれてきた時点で、あなたは神に愛されている存在です」ということ。毎朝の礼拝で、心は自然と神様に向かう。生徒たちは安心できる関係性の中で、友情と信頼を育てながら、それぞれの進路に向かっていくのだ。