2022年、新しい学校として再スタートした千代田国際中学校。日野田直彦校長の下、日本の教育と世界の教育の良さを取り入れた独自のカリキュラムで、生徒への問いを重視し、目的意識を引き出す教育を実践している。
日野田直彦校長
千代田国際中学校は2022年4月、共学校として新たにスタートし、23年春は2期生99人を迎えた。日野田直彦校長は大阪府立箕面(みのお)高等学校や武蔵野大学中学校・高等学校の校長を歴任し、海外大学に多くの生徒を送り出した実績でも注目される人物だ。
「米国の大学では、『So what?』(だから何?)と毎日のように聞かれ、教え子たちは深い思考を求められることに驚き、これではあまり勉強しない日本の大学はかなわないと実感するようです。英語を話せばグローバルというわけではありません。異文化理解、いわば、その国の歴史や文化を学ぶことが最低限必要です。グローバルな社会で生きるというのはそういうことです。先日講演で行った東大では、Purpose(目的意識)や意志のない学生を大勢目の当たりにしました。本校の生徒には、何より目的意識を持って学んでほしい。“資格としての大学”なら行かなくてもいいよ、と言い続けています」。自身も海外で育ち、グローバル社会を体験してきた日野田校長の言葉には説得力がある。
「Why?」(問い)を重視し
知識をアウトプットする
同校は、平日午前は講義型の教科学習のSBL(Subject Based Learning)、平日午後は課題解決型のPBL(Project Based Learning)、土曜日は体験型のLAP(Liberal Arts Project)と、大きく三つに分けた独自のカリキュラムが特徴だ。SBLでは教科の基礎をしっかり学ぶ。PBLでは、微分・積分をなぜ学ぶのか、何の役に立つのか、など「Why?」(問い)を重視し、知識をアウトプットする。「砲弾でも投げた石でも、皆放物線を描いて飛ぶ。その軌道は計算できるんだよ、と教えられれば、勉強の動機付けになり、人生観も変わるかもしれない」と日野田校長は説明する。
土曜日のLAPでは、専門家などを招き本物に触れる体験をして実践する。22年は、今までの人生を振り返る「マイドキュメンタリー」を映像で作ってプレゼンテーションする授業を行った。生徒が作った映像は予想をはるかに超えた出来栄えで、プレゼンを見て涙する保護者もいたという。こうした授業を通じて「Who are you?」(あなたはどのように社会に貢献するのか?)と生徒に問い掛け、考えを表現させる。
「PBLやLAPはインターナショナルスクールの良さを取り入れたもの。日本の学校と世界の学校の良いところを掛け合わせているだけで、別に新しいことをしている意識はありません。いうなれば和魂洋才。松下幸之助や本田宗一郎を生んだ日本には、日本の良さがあり、その良さを追求してやがてイノベーションを起こせる人材を育てたいのです」と日野田校長。常識にとらわれない「未来の学校」づくりが着々と進んでいる。