1901年、日本最初の女子高等教育機関として開校された日本女子大学校(現・日本女子大学)の附属校。“森の中の学校”と称される緑豊かなキャンパスで、才能を掘り起こし、一生涯自分の核となるものを培っていく。
野中友規子中学校校長
創立から120余年、建学の精神「自学自動」は、「自ら考え、自ら学び、自ら行う」という教育目標として、日本女子大学附属中学校・高等学校に連綿と受け継がれている。
「本校は授業や自治活動などあらゆる場面で、自分で課題を見つけて取り組み、意見や作品を発表するプレゼンテーション教育に力を入れています」と語るのは、2023年4月に就任した野中友規子新校長だ。
その成果の一例を挙げよう。中学3年次では自らテーマを決め、1年かけてそのテーマを研究する「年間研究」に取り組むが、22年度はその研究に端を発し、1人の生徒が東京大学E.S.S.杯争奪英語弁論大会(東大杯)で並み居る大学生たちを抑えて優勝するという快挙を成し遂げた。しかもオーディエンス賞も獲得した。テーマは、子ども時代に過ごした米国で、身近に感じた差別について。それを英語で書き上げ、東大杯にチャレンジしたのだ。
「私が最も感動したのは、スピーチ後の審査員による質疑応答でした。第2次世界大戦下における日本のアジア侵攻やLGBTQに対する差別といった難しい質問にも、彼女は窮することなく、自分なりの考えを英語で答えていました。こうしたことは、普段から考えていなければできないことです。当校の強みは、どの教科でも『あなたはどう思いますか?』と問い掛けられる中で、考えるための知識と方法を学び、自分の核となるものを培っていけることです。自分の中に揺るぎない核があれば、それが社会で生き抜く力になるのです」と野中校長。
起業家も多く、多様な
分野で活躍する卒業生
同校が、日本で初めて学校教育に取り入れたといわれる「自治活動」も、教育目標実践の場となっている。学校行事の運営からクラスの仕事まで、生徒たちが主体となり、互いに考えをぶつけ合いながら、学校生活をより良くするための方法を考え、行動しているのだ。ちなみに23年度の自治活動のスローガンは「創る進化、つながる伝統、届ける思い」。生徒自らが創作したものだが、伝統に甘えず、新しいものを創って、その思いを全ての人に届けたいという同校らしい主張が込められている。
卒業生は多様な分野で活躍しているが、起業家が多いのも特徴の一つだ。ワーク・ライフ・バランスの普及に取り組んだり、マタニティーウエアの輸入販売業に勤しむなど、女性の社会進出を後押しするような前例のない事業を起こす人もいる。「やっている人がいないなら、自分で会社をつくってしまおうという発想はまさに『自学自動』です。ある卒業生が『学ぶとは、自分の明日を創ること』という言葉を残してくれました。本校の教育の真価は、卒業生たちの活躍が証明してくれていると思っています」(野中校長)。