東京・世田谷区成城の住宅地に立地する。教員たちは男子教育のプロを自覚し、「勉強も部活動も100対100」で打ち込める環境を整え、合格実績が伸長している。帰国生が全体の約6分の1を占めるグローバルな環境も魅力だ。
近年、大学合格実績が目覚ましい。2023年の春、医学部を含む国公立大学の合格者は現役だけで62人、早慶上理は223人を数える。注目したいのは、入学後の成績の伸び率だ。同校では中学入学時の選抜で、最難関国公立大を目指す「Ⅱ類」と難関国公立大・私立大を目指す「Ⅰ類」に分かれるが、高い合格実績を作っているのは「Ⅱ類」だけではない。現役での進学者では東大で7人中5人、慶應大で16人中11人、早稲田大で20人中14人、国公立大医学部の5人中3人が「Ⅰ類」入学者なのだ。
「中学入試ではⅡ類入学を目指して受験される方が多いのですが、入り口で将来は決まりません。進級時の成績でⅠ類からⅡ類への転類が可能なのですが、例年、中3次にⅡ類を1クラス分増設するほど、生徒たちの学力は入学後に伸びます。今春、大阪大医学部に進学した生徒はⅠ類入学者で、6年間塾に行かず合格しました。東京医科歯科大医学部、群馬大学医学部に合格した生徒たちもⅠ類入学で、当初の成績は学年の真ん中以下でした」と話すのは、久保田隆教諭だ。
では、何が生徒たちを変えていくのか。一つは、中学で基礎学力を養成する指導法である。特に成績が中位・下位の生徒たちを置き去りにせず、補習を重ねながら徹底的に底上げを図る。
もう一つは保護者や教員が生徒を信じて支えていくこと。それによって生徒は自分の夢や希望を大切にし、自分の可能性を信じて志を高く持つようになる。
程よい距離感で
思春期の男子をサポート
「本校では、“母校”という意味の“アルママタ”という言葉を大切にしています。自分らしく成長するためには“心の安定”が必要で、教員は生徒に対して、程よい距離感で接していきます。われわれ教員はいわば、思春期の男子教育のプロフェッショナル。多くの面談を実施しながら生徒の適性を理解し、部活動も勉強も、100対100の割合で、諦めることなく最後までやり切る力を育てます」(久保田教諭)
キャリア・スタディでは、医師や経営者、法律家や技術者など、社会の第一線で活躍するOBが全面的に支援、講演や職業体験などを通じて後輩たちにエールを送る。大学生のOBチューターが常駐する自習室、教員室に隣接したスタディ・ラウンジなども設置、学外の講師を招いた医学部対策講座の開講など、学ぶ環境は豊富に整えられている。
14年度から帰国生入試を導入し、現在は学年の約6分の1が帰国生。多様な国や地域の文化、慣習、思想などを経験してきた生徒がクラス内にいて、日常的に異文化の疑似体験ができる環境も魅力的だ。23年度からは2月1日午前入試に参入。第1志望の生徒が多く入学するようになり、“トシコー”人気はさらに上昇している。