1883年、日本近代哲学の父・西周(にしあまね)を初代校長に迎え創設された、獨逸(ドイツ)学協会学校を前身とする伝統校。医学界、法曹界、教育界に多数の優れた人材を輩出。グローバル教育と環境教育に力を入れている。
2023年、創立140年を迎えた獨協中学校・高等学校は、完全中高一貫男子校のメリットを生かし、男子の成長に合わせた教育と、興味のあることに全力でチャレンジできる環境を整えている。伝統的に医師を目指す生徒が多く、上田善彦校長も同校OBかつ獨協医科大学の1期生。同大学埼玉医療センターで副院長を務めた経験を持つ現役の医師であり、高2、高3を対象とした年2回の「医学基礎講座」の講師を自ら引き受けている。
「21年度から高大連携の強化で獨協医科大に『系列校推薦枠』が創設され、21年度6人、22年度11人が同大学に進学しました。上田校長による医学基礎講座の指導の効果もあったと思います」と坂東広明教頭は話す。
また、同校はグローバル教育に力を入れている。英語はもちろん、創設時からドイツとの関係が深く、高1から第2外国語として世界基準のドイツ語を学べるのも同校の特色だ。毎年2~3割ほどの生徒が履修し、ドイツ語同好会には中1からドイツ語を学ぶ生徒がいるという。
「今年は3年間中止していた中3~高2を対象とした夏休み10日間のドイツ研修旅行を再開します。説明会を開催したところ、定員の3倍以上が集まりました。志望動機を重視した面接試験で選出します」と坂東教頭。同校はまた、ドイツ外務省が高校生向けに展開する「PASCH(パッシュ)」にも参加。これはドイツをキーワードに世界2000校以上をつなげるネットワークで、「PASCHによるドイツへの招待研修には、日本でのパートナー校枠8人のうち、2人が本校より選出されました」(坂東教頭)。
「環境問題」で
世界とつながる
同校のもう一つの特色ある取り組み、それは環境教育だ。ホタルが生息するビオトープは同校のシンボル。校舎の屋上の緑化も行われている。これらの管理・運営を行っているのが生徒による「緑のネットワーク委員会」。近隣の小学校に出向いて環境に関する授業や指導を行う「環境ファシリテート活動」や、地域の福祉センターにビオトープを設置し定期的に障がい者と交流するなど、校内にとどまらない活動が評価され、19年には「高校生ボランティア・アワード」(主催:風に立つライオン基金)に選出された。
彼らの活動はPASCHを通じて、ドイツで環境問題に取り組むエコレアインターナショナルシュベーリン校の目に留まり、同校との交流も始まった。
身近な課題から地球規模の課題まで環境問題は幅広い。「環境」をテーマにすれば、海外の学校と探究学習的な交流を進めることができる。それは同校が目指す「未来につながる地域・社会に貢献できる社会の優等生の育成」とも一致する。グローバル教育も環境教育も、ますます深化していくに違いない。